北京市の最低賃金、9月から1,890元に9.9%引き上げ

(中国)

北京発

2016年08月22日

 北京市人力資源社会保障局が8月10日に公表した「北京市の2016年の最低賃金基準の調整に関する通知」(京人社労発[2016]128号)によると、9月1日から北京市の正社員(全日制労働者)の最低賃金基準が月額1,720元から1,890元(約2万5,800円から約2万8,350円、1元=約15円)へと9.9%引き上げられる。時給換算では9.89元から10.86元となる。

<ここ5年は10%前後の上昇率に>

 北京市は2010年の71日に最低賃金を引き上げた後、2011年から2013年までは毎年11日に引き上げを実施してきた。2011年に月額960元から1,160元、2012年に1,260元、2013年に1,400元へと引き上げた。その後、2014年は41日に1,560元、2015年も41日に1,720元へと引き上げを行った(2015年2月26日記事参照)。

 

 上昇率でみた場合は、2010年が20.0%、2011年が20.8%、2012年が8.6%、2013年が11.1%、2014年が11.4%、2015年が10.3%、2016年が9.9%の上昇となっており、2010年と2011年の2割増の後、ここ5年は10%前後で推移している。

 

 人力資源社会保障部の722日の記者会見で李忠報道官は、2016年に入って6月末までに、全国6地域で最低賃金基準が引き上げられ、平均上昇率は11.1%だったことを明らかにした。これを受けて、以前に比べて最低賃金上昇率が低下している、と中国各メディアが報じており、経済成長率の伸びの鈍化を受けた調整との見方が有力だ。

 

 しかし、「小康社会(ややゆとりのある社会)」の建設のため、経済の中高速成長を維持し、2020年のGDPと都市住民・農民の1人当たり収入を2010年比で倍増する目標が打ち出されていることから、今後も一定の上昇は続いていくとみられる。

 

 北京市の最低賃金を全国各地域と比較すると、上海市2,190元、深セン市2,030元、天津市1,950元、広州市1,895元などとほぼ肩を並べる高水準といえる。

 

 なお同通知では、これまでの引き上げ時と同様に、以下の4項目は最低賃金基準の構成要素ではないとしている。

 

1)「中班」(昼すぎから夜にかけての勤務)、夜勤、高温、低温、地下、有毒有害物などの特殊な作業環境・条件下での手当

2)残業、時間外賃金

3)労働者個人が納付すべき社会保険料と住宅積立金

4)国と北京市の規定により最低賃金基準に参入しないと決められたその他の収入

 

<パートタイムの時給は21元に>

 また、パートタイム労働者(非全日制労働者)の時給に関する最低賃金基準は18.7元から21元に、休日労働は45元から49.9元に引き上げられた。これらの基準は企業と労働者本人が納付すべき養老・医療・失業保険料を含む。

 

 そのほか、出来高払い形式の企業については、労使対等の協議を通じて労働ノルマと出来高単価を確定し、労働者に法定労働時間内の正常な労働の提供が前提であることを保障し、賃金が北京市の最低賃金基準を下回ってはならない。

 

 さらに、経営が正常で利益が増加している企業は、労働者が法定労働時間内に提供する労働に対し原則、最低賃金基準以上の賃金を支払うべきだとした。経営が困難で最低賃金を全労働者または一部のポストに支払わねばならない場合、賃金集団交渉または従業員代表大会での議論を経なければならない。

 

 労働契約の中で、労働者が労働ノルマあるいは受け入れ任務未達成の場合、企業は最低賃金基準より低い賃金を労働者に提供してよいという条項を設けたとしても、法的拘束力を持たない。

 

(宗金建志)

(中国)

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