2017年のEC市場の売上高は前年比14.3%増

(フランス)

パリ発

2018年02月26日

2017年のフランスの電子商取引(EC)市場の売上高は前年比14.3%増の817億ユーロだった。11月から12月にかけてのクリスマスおよび年末商戦が17.5%増と大きく伸び、中でも11月第4金曜日の大型セール「ブラックフライデー」の売上高は69%増と急増した。

1人当たりの年間平均支出額は2,184ユーロ

電子商取引・通信販売事業者協会(FEVAD)が2月6日に発表した「2017年のフランスにおけるEC市場」によると、フランスのオンライン利用者は3,700万人、利用者1人当たりの年間平均支出額は2,184ユーロ(前年:2,000ユーロ)、1回当たりの平均支出額は65.5ユーロ(69ユーロ)となった。1人当たりの平均年間支出額は2007年の763ユーロから約3倍、EC市場の総売上高は2005年の84億ユーロから約10倍となった。

1回の平均支出額については、年間契約による配送料無料サービスの利用者が増え、まとめ買いが減っていることなどにより、2005~2009年の90ユーロ前後から減少している。一方、平均購入回数は前年比19%増となった2015年以降に増加傾向がみられ、2017年は19%増の33回に増え、年間支出額を押し上げた。オンラインによる商品売り上げの上位は衣料品と本・DVDなどの文化関連商品で、アクセス件数が多かったECサイト(サービス業を除く)の上位は「アマゾン」「シーディスカウント」「フナック・ダーティ」だった。

利用者は主に自宅のパソコンから購入しているが、スマートフォンやタブレットなどのモバイル機器による購入は前年比38%増と大きく伸びた。モバイル機器は、パソコンより簡単に、購入前に他の顧客による商品の感想を閲覧したり、購入後の商品情報を共有したりするなど、従来とは違う小売り形態をつくり出している。FEVADのマーク・ロリビエ代表は「4Gの浸透やウェブサイト、アプリの開発により、今後モバイルによる販売の拡大が見込まれる」と予想する。

3人に1人がEU域外のオンラインショップを利用

EC市場の拡大に伴い、越境ECも普及してきた。FEVADと世論調査機関CSAによる共同調査(18~74歳のオンライン利用者1,002人が対象、2017年12月26日~2018年1月2日に実施)によると、半数以上(59%)が2017年に「国外のオンラインショップで購入した」と回答。44%がEU域内、34%がEU域外からだ。売り上げ上位は、衣類・ファッション関連品(44%)や家電製品(34%)だった。

越境ECに関して、欧州議会は2月6日、ECサイト上のEU加盟国に対する「ジオブロッキング」を禁止するEU規則改正案を採択した。今後、EU理事会での採択を経て、EU官報掲載の20日後に発効し、官報掲載の9カ月後に適用開始となる見通しだ。ジオブロッキングとは、国外からの支払い受付拒否や居住国のウェブサイトに自動転送することなどにより、国外へのオンライン販売を制限、阻止すること(ジェトロセンサー特集「EUデジタル単一市場-構築への進捗状況と課題『越境EC促進3規則案の審議が進行』」参照PDFファイル(441KB))。

欧州委員会によると、EUのオンラインショップの63%が何らかのジオブロッキングを設けている。EUの消費者は、改正によりEU域内の最も安いECサイトから商品やサービスを自由に購入できるようになる。ただし、今回の改正案では、著作権に保護されている電子書籍、音楽配信、オンラインゲームは対象外とされた。

フランスのEC市場の売上高は、2019年末には1,000億ユーロを突破する見込みで、ジオブロッキングの禁止により越境ECのさらなる成長が期待されている。

(奥山直子)

(フランス)

ビジネス短信 9a27ecc125b7904d