香港とASEANのFTA交渉妥結、11月にも調印

(香港、ASEAN)

香港発

2017年09月21日

香港特別行政区政府(以下、香港政府)は9月9日、ASEANとの自由貿易協定(FTA)交渉が妥結したと発表した。フィリピン・パサイ市で開催されていた第2回香港ASEAN経済貿易相会合で交渉が妥結した。11月にも調印される見通し。

交渉3年、投資協定にも調印

香港政府は当初、ASEANに対し、2010年1月に発効したASEAN中国FTA(ACFTA)への参加を要望していた。しかしASEAN諸国は、2013年3月のASEAN経済相会合において、香港とのFTAはACFTAとは異なるかたちで締結するのが望ましいとの方針で一致、それを受け香港政府は同年4月、ASEANとのFTA交渉に入ることを決定し、2014年7月から交渉を続けていた。妥結までには3年を要したことになる。

香港政府によると、ASEAN側と調印するのはFTAおよび投資協定となる。詳細な内容は明らかになっていないが、両協定には物品貿易、サービス貿易、投資、経済・技術協力、紛争処理解決メカニズムに関する内容が盛り込まれる予定だ。このうちFTAについては、調印後、ASEAN10カ国のうち4カ国が国内手続きを完了した時点で発効に向けた手続きが開始されることとなっている。

香港はASEANにおけるプレゼンス向上に期待

香港政府の邱騰華(エドワード・ヤウ)商務経済発展局長は「ASEANは香港の重要な貿易パートナーで、2016年は(中国に次いで)2番目の物品貿易のパートナーだった。FTAおよび投資協定を通じ、香港はASEAN市場においてより多くかつより良い参入機会を獲得することになるほか、ビジネス界にも新たなチャンスをもたらすこととなる。香港とASEAN間の貿易・投資の拡大に資するほか、香港経済にもプラスに働く」と強調した。

香港は長期にわたり「中国へのゲートウエー」としての役割を担ってきたが、両協定の発効後は、「ASEANへのゲートウエー」としても力を発揮することができるかが焦点になるとみられる。ASEANは、中国政府が推進する「一帯一路」戦略において、地理的には「一路」に位置する重要な地域で、香港政府は同戦略に積極的に参画する姿勢を強めているが、両協定の発効が、企業を含めた香港のASEAN地域におけるプレゼンス向上につながるか注目される。

貿易は香港側の輸入超過

香港側の統計によると、2017年1~7月の対ASEAN貿易総額は前年同期比12.2%増の5,186億3,700万香港ドル(約7兆2,609億1,800万円、1香港ドル=約14円)で、輸出は9.4%増の1,616億6,200万香港ドル(うち再輸出1,573億6,700万香港ドル)、輸入は13.5%増の3,569億7,400万香港ドルと、香港側の大幅な入超となっている(表1、2参照)。

主要品目をみると(HSコード2桁ベース)、輸出は1位が電気機器など(85類)で、22.4%増の783億9,200万香港ドルと、全体の5割近くを占めている。2位は機械機器など(84類)で3.7%増の253億6,100万香港ドル、3位は真珠・貴金属など(71類)で11.3%減の73億4,900万香港ドルとなっている。

表1 香港のASEANへの輸出額の推移(上位品目)

輸入は1位が電気機器など(85類)で14.7%増の2,489億9,200万香港ドルと、全体の約7割を占めている。2位は機械機器など(84類)で8.4%増の404億1,900万香港ドル、3位は鉱物性燃料および鉱物油(27類)で55.2%増の168億9,000万香港ドルとなっている。

 表2 香港のASEANからの輸入額の推移(上位品目)

(中井邦尚)

(香港、ASEAN)

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