国家非常事態宣言を4ヵ月延長

(エチオピア)

アディスアベバ発

2017年04月05日

 2016年10月に発令された6ヵ月間の国家非常事態宣言が4ヵ月延長されることになった。国内各地でデモが頻発したころと比べて治安情勢は大きく改善しており、各種の制限措置も緩和されているが、シラジ防衛相は、国民議会での延長の是非を問う投票を前に、「一部に平和と安全を脅かそうとする人々がいる」と説明した。

治安維持に効果を発揮との評価も

国民議会は3月30日、2016年10月8日付で出されていた6ヵ月間の国家非常事態宣言を4ヵ月間延長することを決めた(注)。宣言発令の契機となったのは、首都アディスアベバ市から車で1時間半~2時間ほど離れたオロミア州ビショフツ市で最大民族のオロミア族の伝統的な祝祭が政府への抗議行動となり、鎮圧しようとした治安部隊との間で群衆がパニックを起こしたことだった。政府発表で50人以上の死者が出たことを受け、当時、同州を中心に発生していた反政府活動が過激化し、暴徒化した群衆が農園や工場を襲う事態も発生した。また、アムハラ州でもティグライ州との州境の帰属をめぐる司法判断への反発から政府への抗議活動が活発化していた。抗議活動が政治的不自由、汚職、雇用不足など、多岐にわたるようになり、デモの発生地域も全国に広がり始めたことが、国家非常事態宣言の発令につながった。

宣言の期限が迫る中、当地メディアは、国家非常事態宣言司令部が4月に国会に報告し、解除か延長か採決されると報じていた。非常事態宣言が治安維持に効果を発揮しているとする声もあり、政府の調査では国民の80%以上が宣言を支持しているとされる。他方、非常事態宣言が常態化するのに慣れてはいけないと主張する評論家もいる。

治安は大きく改善、制限措置も順次緩和

非常事態宣言は延長されたが、治安情勢は大きく改善しており、当地を訪れる日本企業関係者も回復傾向にある。日本の外務省も3月23日付で、アムハラ州とオロミア州のそれぞれ一部地域の危険情報を「レベル1」(十分注意してください)に引き下げた。

宣言発令当初に敷かれた各種制限措置も順次緩和されている。a.政治的メッセージの禁止、b.一部地域での通信遮断の可能性、c.集会やデモ、団体行動、組織活動の制限、d.裁判所の令状なしの逮捕や家宅捜索、e.車両や身体の無作為な検査、f.一部地域での外出禁止、のうちこれまでに、外交官の地方への移動制限、携帯電話からのインターネット接続規制、工場や開発施設への夜間の立ち入り禁止、令状なしでの被疑者拘束やメディアの検閲、が解除されている。政府は引き続き国内情勢を見極めながら、徐々に制限措置を緩和し、非常事態宣言解除のタイミングを見計らうものとみられている。

(注)延長期間が国会決定日(3月30日)から4ヵ月か、もともとの6ヵ月間の期限後の4ヵ月なのかは不明。

(関隆夫)

(エチオピア)

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