現地スーパーマーケットチェーンに聞く、バングラデシュ消費市場の可能性

(バングラデシュ)

ダッカ発

2022年05月12日

バングラデシュの消費市場は新型コロナウイルス禍の中でも、堅調な経済成長を背景に、着実に伸長しているとみられる。例えば、モダントレード(ダッカやチョットグラムを中心とする250以上の近代的スーパーマーケット市場)全体の売り上げは、同国で新型コロナが確認された2020年3月以降、食品の衛生面や安全性に対する顧客の意識の高まりもあり、約50%増の状況にあると報じられている(「デイリー・スター」紙5月12日)。

モダントレードの市場規模(推定年間売上高)は現地報道によると、約300億タカ(約450億円、1タカ=約1.5円)で、チェーン店でない店舗も含めると、モダントレードの総店舗数は1,000にも及ぶ。他方、小売市場全体でみると、同市場のシェアはわずか2%にとどまっており、「ウェットマーケット」と呼ばれる伝統的な市場での販売が依然として大部分(約98%)を占めている。モダントレードの市場規模は、スリランカなど近隣諸国と比べても低い(「ビジネス・スタンダード」紙3月5日)ものの、上述のとおり、都市部では国民生活の一部として徐々に浸透しつつあるとみられる。

そこで、ジェトロは、当地のスーパーマーケットチェーンの先駆けである「アゴラ」のアブ・アラファットマーケティング部長に、現在の取り組みや同業界の課題、可能性について聞いた(4月20日)。

(問)設立の背景、現在の取り組みは。

(答)当社は、地場のグループ企業(2022年2月4日記事参照)のラヒマフルーズ(Rahimafrooz)社の事業の多角化に伴って設立し、2001年にバングラデシュ国内で初となるスーパーマーケットを出店した。現在もダッカ市内を中心に、国内で計18店舗を展開している。冷蔵・冷凍管理を徹底したベンガルミート(BENGAL MEAT、注)社の食肉製品など衛生面に考慮した食料品や日用品を中心に、電化製品や衣料品、玩具など、それぞれの店舗が取扱商品に特化した、伝統的な市場とは異なる豊富な製品を扱っている。ここ数年の年間売上高は約50億タカだ。

(問)新型コロナ禍における新たな取り組みは。

(答)当社は2020年9月、地場系電子商取引(EC)のショホズ・スーパーアプリケーション(shohoz super application)と連携し、同社のプラットフォームを通じたオンライン販売を開始した。現在は、当社ウェブサイトで独自のオンライン販売とデリバリーを行なっており、運送費を自社負担することで、店舗と同価格での購入を可能にしている。

(問)貴社独自の取り組みは。

(答)当社では顧客の定着を目的とした「メンバーシップカード制度」という会員制度を有しており、利用者はアゴラ全店舗およびオンラインでの購入時に会員情報を提示することで、100タカごとに10ポイント(1ポイント=1タカ相当)を得られる。また、アメリカン・エクスプレス(American Express)、地場銀行のシティバンク(city bank)と提携したアゴラのクレジットカード保有者には、入会時に2,000タカ分のクーポン提供なども行っている。

(問)当地の小売市場の課題は。

(答)スーパーマーケットでは、利用者は小売価格に対する消費税5%分も含めて支払う必要がある一方で、伝統的な市場の販売価格は、利用者と店との間の交渉で決まることが一般的で、消費税を追加で支払うことはない。多くの国民にとって消費税は大きな負担と言われており、モダントレードの拡大に当たり、「伝統的市場との価格差」が最大の課題と考えている。

(問)貴社の今後の取り組み、展望は。

(答)仕入れ・配送から販売まで、徹底した管理下で販売している生鮮食品や健康志向の加工食品など、伝統的市場にはない商品の販売拡充に一層注力していくことで、当地の小売市場の発展に貢献していきたい。

なお、アゴラは2022年3月、スリランカで小売りやレストランなどの事業を手掛けるソフトロジック・リテールホールディングス(Softlogic Retail Holdings)によって買収された(「ビジネス・スタンダード」紙3月5日)。今後、バングラデシュでは外資も含め、小売市場の動向に一層注目が集まるだろう。

(注)世界水準の管理方法に基づき、新鮮かつ衛生的なハラール製品を販売する地場企業。

(イスラット ジャハン、八百板翼、山田和則)

(バングラデシュ)

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