EU理事会、対ロシア制裁の対象を95人、23企業・主体に拡大−クリミア自治共和国での6分野の新規投資も禁止−

(EU、ロシア、ウクライナ)

ブリュッセル事務所

2014年07月31日

EU理事会(閣僚理事会)は7月30日、ロシアの政府高官らに対してEU域内への渡航禁止と資産凍結を科す制裁措置の対象者を87人から95人に拡大するとともに、法人などの制裁対象を23企業・主体に広げることも決定した。この決定はウクライナ危機に関連したもので、同日のEU官報に掲載され、即日発効した。加えて、クリミア自治共和国とセバストポリ市での輸送、通信、エネルギーなど6分野での新規投資などを禁止することも決めた。

<制裁対象にロシア大統領府第1副長官ら8人を追加>
EU理事会は7月30日、ウクライナ東部の情勢とクリミア自治共和国のロシアへの違法な編入に鑑み、さらなる制裁措置を実施することで合意した。この決定は、7月28〜29日に行われたEU理事会の常駐代表委員会(COREPER、大使級会合)での合意内容を法制化するもの。

まず、EU域内への渡航禁止と資産凍結を科す制裁措置(2014年7月28日記事参照)の対象者に、ロシア大統領府第1副長官のアレクセイ・グロモフ氏や、4月に分離独立派が独立宣言した「ドネツク人民共和国」のスポークスパーソンのオクサナ・チグリナ氏、ボリス・リトビノフ最高評議会議長ら8人を追加した。また、分離独立派が使用した地対空ミサイルを含む対空兵器を製造するロシアの国有企業「アルマズ・アンティ」やロシア・ナショナル商業銀行(RNCB)など3社を追加することを決定した。

これは、7月25日付理事会規則(EU)No811/2014が同日に発効したことに伴い、ウクライナ東部の不安定化やクリミア自治共和国の違法な編入に責任のあるロシアの政策決定者を特に支援したり政策決定者から利益を得たりしている人物や企業・主体を特定し、上記制裁リストに追加したものだ。

制裁対象に8人と3社を加える7月30日付理事会決定2014/508/CFSP同日付理事会実施規則(EU)No826/2014を同日のEU官報に掲載し、即日発効させた。

<石油・ガス・鉱物資源開発への新規投資などを禁止>
EU理事会はまた、7月16日の欧州理事会(EU首脳会議)(2014年7月18日記事参照)の要請を踏まえて、違法な編入を認めないとするEUの政策の一環として、クリミア自治共和国とセバストポリ市との貿易・投資を制限する新たな措置を採択した。同措置には、同共和国と同市における輸送や通信、エネルギー各分野におけるインフラプロジェクトに加え、石油、ガス、鉱物資源の開発における新規投資の禁止が含まれる。これら6分野においては、主要な機器の輸出も認められないほか、これらの取引に関連する融資や保険の提供も禁止される。

これらの禁止措置は、クリミア自治共和国とセバストポリ市からのウクライナ当局発行の証明書がない商品の輸入を禁止する6月23日付理事会決定2014/386/CFSP同日付理事会規則(EU)No692/20142014年6月25日6月30日記事参照)をそれぞれ改正する7月30日付理事会決定2014/507/CFSPおよび同日付理事会規則(EU)No825/2014として同日のEU官報に掲載され、前者は即日、後者は翌31日に発効する。

<ロシアへの直接的な経済措置も採択の見込み>
さらに、EU理事会は分離独立派を通じたウクライナ東部の不安定化におけるロシアの役割に対する経済制裁措置を翌31日に採択しなければならないとしている。同措置は29日の常駐代表委員会で合意に達しているが、法制化にはEU理事会での決定とEU官報への掲載が必要になる。

29日の常駐代表委員会で合意した内容は、EU資本市場へのロシアのアクセスを制限するため、EU加盟国や企業はロシアの国有銀行や開発銀行、その支店などが発行する満期が90日を超える新しい債権や株式、類似の金融商品を購入できなくなる。このような金融商品の発行に関連するサービスも禁止される。加えて、ロシアから、あるいはロシアへの武器と関連品の輸出入が禁止される。さらには、軍事利用目的または軍をエンドユーザーとする二重用途物品・技術(民生および軍事の両方に使用される物品)のロシア向け輸出は禁止される。二重用途物品としてEUリストに掲載される全ての項目が対象となる。最新リストは2009年5月5日付理事会規則(EC)No428/2009のアネックスを参照。

(田中晋)

(EU・ロシア・ウクライナ)

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