2013年の貿易規模は73億ドルを超える−KOTRA調査、1990年以降で過去最大に−

(北朝鮮)

中国北アジア課

2014年06月05日

大韓貿易投資振興公社(KOTRA)は、各国の貿易統計資料を基に作成した2013年の北朝鮮の貿易動向を発表した。それによると、2013年の北朝鮮の貿易規模は前年比7.8%増の73億4,500万ドルに達し、KOTRAが北朝鮮の貿易動向の集計を開始した1990年以降で最大規模となった。

<貿易赤字幅は前年より多少改善>
KOTRAが5月22日に発表した「2013年の北朝鮮の対外貿易動向」調査報告書によると、北朝鮮の輸出は前年比11.7%増の32億1,800万ドル、輸入は5.0%増の41億2,600万ドルで、貿易赤字は前年の10億5,100万ドルから9億800万ドルとなり、赤字幅は多少改善された(表1参照)。

表1北朝鮮の輸出入の推移

北朝鮮の貿易総額は、2011年の63億7,500万ドル、2012年の68億1,100万ドルと拡大傾向にあったが、2013年は73億4,500万ドルになり、KOTRAでは、1990年の調査開始以来、最大規模になったと説明している。

貿易規模拡大の要因としては、石炭、鉄鉱石、銅、アルミニウムなどの鉱物資源や賃加工に基づく繊維、衣類の輸出が増加していることに加え、電気機器、輸送機器、穀物の輸入が増加していることを挙げている。

KOTRAの資料には含まれていないが、韓国統一部が明らかにしているところによると、韓国と北朝鮮の2013年の南北交易は11億3,600万ドルに達している(2014年3月24日記事参照)

<貿易相手先では中国が9割近くを占め圧倒的規模>
北朝鮮の貿易を国・地域別にみると、中国が圧倒的な規模を誇っている。2013年も、対中輸出は前年比17.3%増の29億1,400万ドル、対中輸入が3.0%増の36億3,300万ドル、合計で8.9%増の65億4,700万ドルと、北朝鮮の貿易総額の9割近くを占めている(表2参照)。

表2北朝鮮の10大貿易相手国・地域(2013年)

北朝鮮は、中国が反対の立場を表明したにもかかわらず、2012年12月にミサイルを発射し、2013年2月には核実験を強行したために、中国は北朝鮮への輸出や北朝鮮からの輸入の際の通関検査を強化していた。このため、2013年の中朝貿易は鈍化する可能性もあったが、結果的には前年比8.9%増となり、核実験などの強行は中朝貿易自体には、それほど大きな影響は与えなかった、とKOTRAでは分析している(2014年3月4日記事参照)

中国以外の主要貿易相手国・地域は、ロシア、インド、タイ、シンガポール、台湾、香港、ウクライナと続くが、貿易規模はロシアを除くと、いずれも1億ドル未満になっている。

ロシアは、貿易規模が前年比37.3%増の1億420万ドル(対ロ輸出は770万ドル、対ロ輸入は9,650万ドル)となったが、これは2013年下半期に北朝鮮の羅津とロシアのハサンを結ぶ鉄道が開通したことで、ロシアからの機械類や輸送機器の輸入が急増したため、としている。

また、前年2位だった香港との貿易規模が前年比7割減となったのは、香港向け電子機器や機械類の輸出と香港からの魚介類の輸入が大幅に減少したため、と分析している。

一方、前年35位の相手国にすぎなかったウクライナが急浮上したのは、北朝鮮がウクライナから航空機および同部品を輸入したため、としている。

<品目別輸出では鉱産物が大きな比重>
北朝鮮の輸出を品目別にみると、鉱物性生産品が18億9,131万ドルで、輸出全体の58.8%を占めている(表3参照)。とりわけ石炭・褐炭の輸出が輸出全体の44.4%を占めるとしている。次いで、繊維製品が6億3,638万ドルと全体の19.8%を占めるが、このうち賃加工による分が5億2,000万ドルに達しているとしている。以下、鉄鋼・金属製品が2億4,496万ドルで7.6%、動物性製品が1億1,931万ドルで3.7%を占めている。

表3北朝鮮の品目別輸出の推移

一方、輸入では、原油・精油を中心とした鉱物性生産品が8億421万ドルで19.5%を占め、最も多い(表4参照)。このうち、原油・精油は前年の8億1,000万ドルよりは3.8%ほど減少したものの、7億8,000万ドルに達しており、そのほとんどが中国からの輸入としている。次いで、繊維製品が6億5,278万ドルで15.8%を占める。以下、機械・電気機器が5億9,307万ドルで14.4%、プラスチック・ゴム製品が3億1,456万ドルで7.6%、輸送機器が2億9,037万ドルで7.0%を占める。

表4北朝鮮の品目別輸入の推移

KOTRAは、国連による経済制裁にもかかわらず、北朝鮮の貿易規模が2010年以降、4年連続して拡大しているのは、石炭や鉄鉱石などの鉱物性生産品の対中輸出が増加していることによるが、貿易依存度がこれ以上中国に偏らないようにするため、北朝鮮はロシアとの関係拡大にも比重を置いているようにみえると分析している。

(根本光幸)

(北朝鮮)

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