2013年の南北交易は前年比42.4%の大幅減−開城工業団地の操業中断が響く−

(韓国、北朝鮮)

中国北アジア課

2014年03月24日

1989年に開始された南北交易(韓国と北朝鮮の貿易)は、2005年に10億ドルの大台を超えてからも順調に推移し、2012年は19億7,111万ドルと過去最高を記録した。しかし2013年は、北朝鮮の一方的な措置により4月初旬から9月中旬までの5ヵ月余り、南北経済協力の象徴とされる開城工業団地の操業が中断されたことで、前年比42.4%減の11億3,585万ドルに急減した。

<開城工業団地が5ヵ月余り操業中断>
韓国統一部は2014年に発行された月刊「南北交流動向」2013年12月号で、2013年の南北交易の状況を明らかにしている。

それによると、2013年の南北交易は韓国側の搬出(注1)が前年比42.0%減の5億2,060万ドル、北朝鮮からの搬入は42.7%減の6億1,524万ドルで、合計は42.4%減の11億3,585万ドルの大幅減だった(表1参照)。また、搬出から搬入を差し引いた交易収支は、韓国側の9,464万ドルの赤字となった。

表1南北交易の推移

南北交易は、2010年3月に発生した韓国海軍の哨戒艦「天安号」沈没事件を受けて、韓国政府が2010年に実施した「5.24措置」により、開城工業団地以外の南北間経済交流は原則として禁止(注2)されていることから、2013年の交易額が前年比4割を超える大幅減となったのは、開城工業団地が2013年4月3日から9月15日までの5ヵ月余り、操業を中断していたことによるといえる(2013年8月27日記事9月20日記事参照)。

<搬入は主要品目が3〜4割の減少>
搬入を品目(大分類)別にみると、絶対額で少ない鉱産物が大幅増となっているほかは、主要品目の繊維類、電子電気機器、生活用品、機械類、化学工業製品のいずれもが3割から4割強の大幅な落ち込みとなった(表2参照)。

品目を詳しくみると、2億5,176万ドルと搬入全体の4割を占める繊維類では、コート、ジャケット、ズボン、スカート、下着、靴下などの繊維製品が2億3,137万ドルと圧倒的に多い。2億1,394万ドルと全体の3分の1を占める電子電気機器では、電子部品が8,206万ドル、無線通信機器を主力とする産業電子部品が5,828万ドル、光ケーブルなどの電線が2,912万ドル、電気釜、照明機器などの家庭用電気製品が2,416万ドルとなっている。

5,688万ドルと全体の9.2%を占める生活用品のうち、履物を中心とした身辺雑貨類が4,974万ドル、ほかに文具類が546万ドル。4,379万ドルと全体の7.1%を占める機械類では、輸送機械が1,879万ドル、産業機械が864万ドルと続く。2,487万ドルと全体の4.0%を占める化学工業製品では、製紙原料・紙製品が1,476万ドル、台所用陶磁器が432万ドル、接着剤230万ドルだった。

また、金額は少ないが、ワカメ、貝類といった水産物やゴマ、クリなどの農林水産物の搬入もみられる。

表2南北交易の品目別搬出入

<搬出は全ての品目で大幅減>
搬出は、表2のとおり全ての品目(大分類)が減少した。3割から5割近い減少幅が目立つが、雑製品に至っては金額は小さいものの、8割近い減少率となった。

搬出された品目を細かくみると、まず1億8,765万ドルと全体の3分の1強を占める繊維類では、ポリエステル織物が7,054万ドル、染色材料が3,479万ドル、生地が1,400万ドル、靴下が830万ドル、短繊維織物815万ドルと続く。次いで1億4,325万ドルと全体の4分の1強を占める電子電気機器では、無線通信機器部品が相当割合を占める産業用電子機器が4,509万ドル、集積回路、印刷回路、液晶デバイスなどで構成される電子部品が4,495万ドル、暖房機器・照明機器部品で構成される家庭用電子製品が2,221万ドル、重電機製品・部品が1,966万ドルとなっている。4,457万ドルと全体の8.6%を占める機械類では、生産を支援する産業機械が1,684万ドルと多く、自動車部品の1,044万ドル、ポンプ部品などの基礎産業機械が590万ドル、暖房機器部品の122万ドルと続く。3,956万ドルの化学工業製品では、製紙原料・紙製品が2,119万ドルと圧倒的で、低密度エチレンなどの石油化学製品が776万ドル、顔料、接着剤、医薬品などの精密化学製品が772万ドルとなっている。生活用品では履物部品、かばん類が多く、鉱産物ではプロパン、軽油などの燃料類が多い。農林水産物では、パン、麺類、その他の加工食品のほか、たばこやコーヒー、畜産物に分類されたソーセージなどもみられる。

<2014年は2012年の水準近くに回復か>
開城工業団地は2013年9月16日から操業を再開し、2014年3月9日の統一部発表によると、同団地の2013年12月の生産額は3,529万ドルと、前年同月比3.1%減の水準まで回復している。今後の生産活動が順調に推移すれば、2014年の南北交易は2012年の水準近くまで回復すると予想される。

なお、統一部の統計資料によると、開城工業団地の2013年の生産額は2億2,378万ドルで、前年の4億6,950万ドルの47.7%の水準にとどまった。

(注1)韓国と北朝鮮の貿易は、国家間の取引ではなく、民族内部の取引であるとの位置付けから、韓国では「南北貿易」とは呼ばずに「南北交易」と呼んでおり、韓国から北朝鮮への輸出は「搬出」、北朝鮮から韓国への輸入は「搬入」という用語を用いて、あくまでも国内取引だとしている。
(注2)前述の「南北交流動向」2013年12月号によると、2013年の南北交易のうち、開城工業団地関連の搬出が5億1,766万ドル、搬入が6億1,465万ドル、合計では11億3,231万ドルとなり、交易全体に占める割合は99.7%(残りの0.3%は対北支援)に達している。

(根本光幸)

(韓国・北朝鮮)

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