メコン圏越境交通、新措置の準備進む-越境交通協定の全面改定待たずに実施へ-

(タイ、メコン)

バンコク発

2017年09月26日

メコン地域の越境交通協定(CBTA)は、2015年に加盟国の批准が完了し、現在、1999年に署名された条文の見直し作業が行われている。CBTAの早期実施に向け、実施可能な措置を前倒しで行う「アーリーハーベスト措置」の準備状況を、事務局を務めるアジア開発銀行(ADB)タイ事務所に聞いた。

改定版CBTAの全面実施は2019年が目標

越境交通協定(CBTA)は、アジア開発銀行(ADB)が事務局を務める、大メコン圏(GMS)開発プログラムの貿易円滑化分野の主要な柱の1つだ。GMSにはメコン5カ国(カンボジア、ラオス、ミャンマー、タイ、ベトナム)に加え、中国(雲南省および広西チワン族自治区)が参加しており、CBTAで定められている、車両の相互乗り入れやシングルストップ検査、各種物品の運搬規則が実施されることで、メコン地域の陸上交通の円滑化が期待される(CBTAの概要は2015年1月15日記事参照)。2015年にタイとミャンマーが批准を終えたことで、CBTA自体は実施可能な状態となった。

他方、CBTAは1999年11月に署名が行われた条文を基に構成されており、内容の一部に古さが目立つようになっている。そのため、オーストラリアの援助機関であるオーストラリア国際開発庁(AusAID)の支援により、「CBTA2.0」と呼ばれる全面的な改定作業が進められている。ただ、改定版CBTAの全面実施の目標は2019年と定められており、円滑な越境交通の早期実現を望む企業との間には齟齬(そご)があった。

そのために導入されるのが、CBTAのアーリーハーベスト措置だ。同措置は、2016年12月に開催された第5回越境交通協定合同委員会において導入が決定されたもので、車両およびコンテナの他国への一時的輸入(一時的進入)に関する条項のみを簡素化し、先行導入するものだ。

ミャンマーを除くメコン地域全域が走行可能に

GMS参加国が2016年12月に採択した「大メコン圏越境交通円滑化協定のアーリーハーベスト措置の実施にかかる覚書」によると、車両の一時的進入措置については、各国500台を上限に、ミャンマーを除く加盟国間で、「一時許可書類(Temporary Admission Document:TAD」と呼ばれる書類を携行することで相互通行が可能となる(ミャンマーは2019年から参加の予定)。TADは12カ月間有効で、事業者間、車両間で融通を行うことはできない。期間内はTADを有する車両の通行回数に制限はないが、「車両の一時的輸入」という形式で車両進入を認めていることもあり、進入先の国には30日を超えて滞在することはできない。

また、アーリーハーベスト措置においては、一時的に輸入する車両およびコンテナについて、輸入関税の支払いや税関へのデポジット、輸入禁止・制限措置を課さないことも明記された。

既存の2国間と3国間の越境交通の枠組みは引き続き有効

8月7日に、GMSの貿易円滑化分野を統括する、ADBタイ事務所のカニヤ上席貿易専門官にインタビューを行ったところ、アーリーハーベスト措置については現在、カンボジア、ミャンマー、タイ、中国が署名を終え、ラオスとベトナムが署名手続きを行っている段階であることが分かった。ベトナムについては9月にGMS閣僚会合を主催するため、署名手続きを急いでおり、またラオスについてはTAD保有車両の走行可能区域〔CBTA付属書1に記載のある区域(注)のみが対象〕について、当初は国道3号線(フエイサイ~ボーテン間)および国道9号線(サワンナケート~デンサワン)に限ることで態度を軟化させているもようだ。

またCBTAの発効に先立ち、GMS地域では、これまで多くの2国間・3国間の車両の相互通行にかかる覚書が結ばれ、順次実施されているが、それらについては国家間の取り決めであり、同専門官は「アーリーハーベスト措置と併存するかたちで当面は活用が可能」と説明する。なお、2019年の実施を目指すCBTA2.0の導入の際には、「それら措置の統合を目指す方針」という。

(注)付属書1に記載のあるルートは、例えば東西経済回廊の場合、モーラミャイン、ミヤワディ(ミャンマー)~メーソット、ピサヌローク、コンケン、カラシン、ムクダハン(タイ)~サワンナケート、デンサワン(ラオス)~ラオバオ、ドンハ、フエ、ダナン(ベトナム)に限定されている。

(蒲田亮平)

(タイ、メコン)

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