スマートホーム技術標準の制定作業を開始

(中国)

上海発

2017年12月27日

中国軽工業連合会と中国家用電器研究院は、スマートホーム技術の標準化を進め、2022年までに完成させる計画を発表した。政府は現在、スマートホームを人工知能(AI)産業の重点分野として位置付け、技術標準の制定や関連製品の相互接続などの開発を促進する方針を打ち出している。

軽工業連合会が3段階の標準制定作業

中国軽工業連合会と中国家用電器研究院は11月22~23日、安徽省●(さんずいに除)州市で「2017中国スマートホームサミットフォーラム」を共催した。「スマート家電産業NB-IoT技術応用白書」を発表し、その中でスマートホーム技術の標準を制定する作業を開始することを明らかにした。

同発表によると、中国の家電業界は既にスマート化段階に入り、2016年のスマート家電製品の売上高は89億700万元(約1,514億円、1元=約17円)に達し、2022年には1,015億元まで拡大すると見込まれる。一方で、スマートホーム技術の標準設定は現在のところ統一基準がなく、中国家用電器研究院の劉挺院長と、工業信息化部消費品工業司の肖杜宇副処長は、これら標準の制定が家電を含める各関連業界の連動性を高め、秩序ある発展に有益だと述べている。

中国軽工業連合会は傘下に「スマートホーム標準化工作グループ」「スマートホーム標準化専門家グループ」を設立し、関連業界の協会、技術機構、テスト・認証機構などと共同でスマートホーム技術標準制定に取り組む。標準制定の関連作業は以下の3段階に分けられる。

(1)2017~2019年:スマートホーム・スマート製造の標準化のための構造設計、組織機構の構築、作業展開方式の決定を行い、一部の基礎技術・コア技術の標準制定を完了する。

(2)2019~2022年:全ての基礎技術・コア技術の標準制定を完了し、スマートホーム技術標準システムの構築を完了する。

(3)2022~2025年:スマートホーム技術標準の普及を進め、関連製品のスマート化の水準を大幅に高める。

通信方式は「NB-IoT」が主流

スマートホーム技術に採用される通信方式は、「Narrow Band-IoT(NB-IoT)」(注)が主流となる可能性が高いことが示唆されている。「スマート家電産業NB-IoT技術応用白書」によると、ほとんどの国内の家電大手メーカーはNB-IoT通信方式に基づくスマート家電の技術研究・製品開発を展開しているという。例えば、家電大手のハイアール、美的、長虹、小天鵝、栄事達はそれぞれ2017年上半期に各通信キャリアとNB-IoT分野の協力協議を締結した。また、ハイアールはスマートエアコン、小天鵝はスマート洗濯機、栄事達はスマート電子ロックを開発するなど、各メーカーはそれぞれスマートホーム製品での応用テストを行っている。

2030年には世界の牽引役を目指す

中国政府は現在、スマートホームを新しい牽引役となる産業として位置付け、発展を促進している。李克強首相が発表した2017年の「政府活動報告」でも、人工知能(AI)は新材料、新エネルギー、集積回路、バイオ製薬、第5世代移動通信とともに重点産業と位置付けられている。国務院は7月20日、「新世代人工知能発展規画の通知」を公布し、2030年までに、中国が人工知能で世界の牽引役となる目標を設けた。スマートホームはスマート製造、スマート農業、スマート物流、スマート金融、スマートビジネスとともに、AIの重点産業分野として取り上げられており、政府はスマートホームの技術標準の制定や、関連製品の相互接続などの開発を促進する方針を打ち出している。

(注)「NB-IoT」は、モバイル通信技術「LTE方式」のうちのIoT機器向けの規格で、省電力性をメリットとし、今後のIoT無線技術の本命に期待されている。

(文涛)

(中国)

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