滞在・就労許可証はニーズに合わせて取得−「駐在員の法務・税務」セミナー(1)−

(フランス)

パリ事務所

2014年01月27日

ジェトロは2013年12月13日、在フランス日系企業を対象に、「駐在員の法務・税務」に関するセミナーをパリで開催した。駐在員への優遇税制を理解することは、日系進出企業の経費削減に欠かせない。法律事務所ランドウェルの横田文志ジャパンデスク責任者による講演を2回に分けて紹介する。前編は滞在・就労許可と社会保障について。

<就労には滞在・就労許可証が必要>
日本人がフランスで就労するためには、滞在・就労許可が必要だ。滞在・就労許可証は移民法(CESEDA)に基づいて発行され、主な資格は、(1)従業員、(2)派遣従業員、(3)欧州ブルーカード、(4)能力・才能カード、(5)学生、(6)居住者カードである。

フランスで給与所得を得るためには、能力・才能カードを除くどれかに該当する必要があり、会社代表者の場合は、能力・才能カードもしくは居住者カードが必要となる。フランスに居住しなくてもフランスの会社代表者になることは可能で、この場合は、商法第122条−1に基づき、管轄の県庁に居住者カードを申請し、受取証明書を受領すればよい。10年間有効で更新可能な居住者カードは、ケースバイケースだが、3年から5年の正規滞在をした後に発行され、従業員、代表者とあらゆる職業に従事することが可能だ。

<フランス企業と現地社員として雇用契約を結ぶ場合も許可証が必要>
フランス企業、もしくは日系企業のフランス子会社と現地社員として雇用契約を結ぶ場合、従業員としての資格の滞在・就労許可証が必要だ。就労が1年以上の申請に対して許可が下りる。解雇された場合でも、許可証の有効期限内であれば他の企業で働くことができる。取得には下記の手続きを取る。

(1)フランス企業がポール・アンプロア(日本のハローワークに相当)に採用募集を通知する。
(2)適当な応募者がいない場合、所轄の企業・競争・消費・労働・雇用地方局(DIRECCTE)に外国人労働者導入の申請を行う。
(3)問題がなければDIRECCTEはこれを許可して、フランス移民局(OFII)に書類を送付する。
(4)OFIIは外国の領事館を通じて、外国人労働者導入手続きを行う。
(5)領事館で発行された3ヵ月有効なビザを持ってフランスに来た本人は、移民局での健康診断を受けた後に、県警察で滞在・就労許可証の発行を受ける。

<同一グループ内の配置転換は派遣従業員の資格>
同一グループ内の配置転換によりフランスに派遣される場合は派遣従業員の資格となる。条件は、a.同一グループ内での派遣、b.月額額面給与が最低賃金の1.5倍(2,145.33ユーロ)以上、c.グループ内の派遣元企業に3ヵ月以上就労していること、となる。フランスの文化、言語などを取得するための外国人受け入れ統合契約(CAI)は免除される。年に1回、県警察に届け出を提出、3年間有効で、1度だけ更新できる。取得手続きは2ヵ月と短い。帯同家族には、1年間有効の家族滞在許可証が発行され、配偶者は就労もできる。

転籍出向(親会社との労働契約は保留され、フランスの子会社と新たな労働契約を締結)と在籍出向(親会社との雇用契約を維持し、フランス受け入れ企業との従属関係はない)の2種類がある。在籍出向の場合、受け入れ企業はフランス子会社だけでなく、取引先のフランス企業でもよい。原則としてフランス労働法、税法が適用される。社会保険に関しては、日仏社会保障協定が適用され、失業保険を除いて社会保険料は免除される。

<欧州ブルーカードは高収入、高学歴が条件>
EU指令(2009/50/CE)により定められた欧州ブルーカードのフランスにおける適用は、2011年9月8日から開始され、フランスだけでなく、他のEU国でも就労が可能な欧州ブルーカードの発行が可能となった。EU域外の国民で、EU加盟国で3ヵ月以上の就労を希望する者を対象とする。年間額面給与5万2,752ユーロ、フランスの企業との雇用契約書、高学歴が条件となる。

<会社の代表者に適する能力・才能カード>
能力・才能カードは、自分の能力と才能を用いて日本とフランスの経済的発展、両国の学術・科学・文化・人道またはスポーツ分野の発展に対し、有意義かつ持続的に関与すると判断された場合に与えられる。提出した企画書に基づいた職業活動が可能だが、活動内容を勝手に変更することはできない。許可証発行の対象となった職業活動を変更した場合には、許可を取り消されることがある。3年間有効で、1度だけ更新可能。帯同家族には家族滞在許可証が発行され、配偶者はすぐに就労が可能。会社の代表者が当該許可証で商業活動を行うことも認められている。

<日仏社会保障協定によりフランスの制度加入が免除>
2007年6月から日仏社会保障協定が適用され、日本の社会保障制度に加入していることを条件に、5年間フランスの社会保障制度加入が免除される。ただし、失業保険は条約の対象外となっているため、フランスの制度に加入する義務がある。会社代表者も従業員同様に社会保障制度が適用されるが、失業保険には加入できない。

上記協定に定められた5年を経ても、現在のところ1年間の延長が認められている。ただし、協定に延期に関する規定はない。

また、フランスの社会保障制度に加入しながら、日本の厚生年金への加入を継続することが2012年3月1日から可能となっている。

(後藤尚美)

(フランス)

駐在手当や外国資産所得に優遇税制−「駐在員の法務・税務」セミナー(2)−

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