欧州理事会、次期中期予算枠組み合意を2013年に持ち越し

(EU)

ブリュッセル事務所

2012年11月26日

11月22〜23日に開催された欧州理事会(EU首脳会議)特別会合では、2014〜2020年の次期「中期予算枠組み」の合意を目指したが、予算規模と配分をめぐり加盟国間の利害調整がつかず、協議は2013年初旬まで継続されることになった。特に、予算規模を物価上昇率程度の引き上げに実質凍結したい英国との調整が困難を極めているほか、仮に欧州理事会で合意できたとしても、「成長と雇用」のために予算増額を主張する欧州議会との難しいかじ取りが求められている。

<合意形成を目指し特別会合を開催>
11月22日から23日にかけて、2014〜2020年の次期「中期予算枠組み(MFF)」の合意を目指し、欧州理事会特別会合が開催された。次期中期予算枠組みの合意は、2012年下半期のEU議長国であるキプロスの最重要課題。10月と12月の欧州理事会は、欧州債務危機への対応やEUの将来に関する長期ビジョンの議論に専念する必要があるため、今回、特別会合を別途開催することで、次期中期予算枠組みの妥結を目指した。

次期中期予算枠組みは、2014年以降の7年間の歳出上限を定めるもの。将来の成長と雇用のために、予算増を求める欧州委員会や欧州議会に対し、加盟各国の緊縮財政を背景に予算の伸びを極力抑えたい欧州理事会との難しい調整が求められる状態となっている。さらに、欧州理事会の中でも、予算拠出の持ち出しが大きく納税者への説明とのバランスを求められる西欧や北欧の加盟国と、債務危機で予算増を求める南欧や格差是正のため予算増を求める中・東欧との間で、合意形成は困難を極めている。

欧州委員会が当初提示した予算枠組みは2014〜2020年の7年間で、EU27ヵ国の国民総所得(GNI)の1.05%に当たる1兆250億ユーロ(クロアチアのEU加盟を前提に、EU28ヵ国で1兆332億3,500万ユーロに修正)だった。これは、現在(2007〜2013年)の中期予算枠組みから4.8%の増加で、この期間の平均物価上昇率2%を大きく上回るものだった。欧州理事会のファンロンパウ常任議長は、ここから800億ユーロ削減した修正案を提示し、加盟国ごとの個別協議を主催するなど、妥協点を模索した。

EUの情報サイト「EurActiv」によると、ファンロンパウ常任議長は各国との個別協議を踏まえて、共通農業予算の維持を求めるフランスや、格差是正予算の十分な確保を求める中・東欧諸国に配慮し、これらの予算を増額する修正案を再度提示した。しかし、そのため、ドイツが希望する「成長と雇用のための競争力」に関する予算、特に欧州のインフラ接続に関する予算が最初の修正案から削減された。他方、予算総額は最初の修正案の金額を維持しため、予算枠の実質凍結を求める英国との溝が最後まで埋まらなかった。英国のキャメロン首相は会議後の国別記者会見で、EU機構に関する経費、特にベルギーの法律に基づく物価スライド方式(インデクゼーション)により、毎年自動昇給するEU機関職員の給与などを引き合いに出し、緊縮財政を強いられる自国予算との対比から受け入れが困難である点を指摘した。

<全加盟国に必要な成長と雇用のための支出>
今回の特別会合は、日程を24日まで1日延長してでも、2012年内の合意形成を目指していた。しかし、加盟国間の意見の相違が大きいため、23日の17時前には会議を切り上げ、「2014〜2020年の次期中期予算枠組みに関するEU27ヵ国の合意を形成できるよう欧州委員会委員長とともに作業と協議を継続するマンデート(権限)を欧州理事会常任議長に付与する」との声明(PDF)を発表。特別会合を閉幕した。2013年明けの早い時期の合意を目指す見通し。

ファンロンパウ常任議長は、次期中期予算は成長のための予算であることに全ての加盟国が合意しており、雇用やイノベーション、研究に焦点を当てると指摘。競争と雇用に関する支出案は今期(2007〜2013年)中期予算より50%以上多い点を強調している。

(田中晋)

(EU)

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