日本産食品の輸入規制を緩和へ−11月1日から発効の見込み−

(EU)

ブリュッセル事務所

2012年10月23日

EU加盟国は10月19日、食品連鎖・動物衛生常設委員会(SCoFCAH)会合で、日本からの輸入食品の放射線検査に関する欧州委員会規則を緩和することで合意した。新規則案では、対象となる12都県のうち福島を除く11都県について、全ての食品と飼料に添付を義務付けてきた放射線検査分析報告書の対象品目を減らし、全ての酒類を輸入規制の対象外とした。規則案は欧州委員会が近く正式に採択する予定で、2012年11月1日から発効し、2014年3月31日まで適用される見込み。

<放射線検査分析報告書が必要な品目を削減>
SCoFCAHは19日、加盟国の投票により、9月から見直しを続けていた日本からの輸入食品規制について緩和することで合意した。

欧州委の正式採択を待って、官報に掲載されてから3日後に発効する予定。ただし、現行の欧州委員会実施規則284/2012(PDF)が10月末で失効することから、11月1日までに発効し、2014年3月31日まで適用される見込み。欧州委の保健・消費者保護総局(SANCO)のフェルストラーテ氏によると、欧州委の採択は10月26日、官報掲載日は27日を予定しているという。

今回の会合で、対象12都県の全ての食品と飼料に添付を義務付けてきた放射線検査分析報告書を、福島県以外の11都県については対象品目を限定することで合意。福島県については、引き続きアルコール飲料以外の全品目における放射線検査分析報告書の添付が必要だが、群馬、茨城、栃木、宮城、埼玉、千葉、神奈川、岩手の8県、東京都については、茶、きのこ類、魚介類、コメ、大豆、小豆、一部の野草と野菜、果物に対象品目を限定する。山梨県はきのこ類、静岡県は茶、きのこ類に限って放射線検査分析報告書が必要となる。

SCoFCAHは、原発事故後の第2収穫期の4万件以上のモニタリング検査結果を基に、放射線検査分析報告書の添付が必要な対象品目を限定することを決定した。

現行規則では、日本酒、焼酎、ウイスキーだけが輸入規制の対象外となっていたが、他のアルコール飲料も含め全ての酒類を、福島県も含めた全地域を対象に、輸入規制の対象外とした。その理由としては、a.測定できるレベルでの放射線が検出されていないこと、b.研磨および発酵プロセスにより放射線が大幅に削減されること、c.日本の当局、輸入国の当局の手続きの負担を緩和する必要性、を挙げた。

<サンプリング検査の抽出率を一律5%に低減>
現行規則では、対象12都県で産出された全ての食品および飼料について、EUでの通関時に貨物の少なくとも5%、また、対象12都県から発送された全ての食品および飼料については少なくとも10%がサンプリング検査の対象となっていた。これは下限を設定したものだったため、加盟国によってはこれら以上の割合でサンプリング検査を実施することも可能だった。

ここ1年以上、通関時のサンプリング検査で問題事例がなかったことから、通関時のサンプリング検査の抽出率を減らすことで合意し、全加盟国・全品目で一律5%と規定した。

11月1日以降は輸出証明書は新規則の付属書1が有効となる。ただし、新規則の発効日以前に日本を出発した食品、あるいは輸出証明書の発行日が11月1日より前のもので、12月1日より前に日本を出発した食品に関しては、現行規則(欧州委員会実施規則284/2012)の輸出証明書も有効とする。

今後の見直しについて、原発事故後第2収穫期のモニタリング検査結果がまだ明らかでないコメ、大豆などについては、2013年3月に見直しを実施する予定。

また加盟国は3ヵ月ごとに全ての分析結果を、食品および飼料に関する緊急警告システム(RASFF)を通じて欧州委に報告しなければならない。

なお、SCoFCAHにおける委員会実施規則の改正案はEuropean Commission: Comitology Registerで閲覧可能。

(小林華鶴)

(EU)

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