2011年の北朝鮮のGDP、3年ぶりにプラス成長−0.8%と韓国銀行推計−

(韓国、北朝鮮)

中国北アジア課

2012年07月24日

韓国銀行(中央銀行)は2011年の北朝鮮のGDP推計を7月8日発表した。それによると、08年に3.1%と北朝鮮としては高い成長率を達成して以降、09年は0.9%減、10年は0.5%減と2年連続してマイナス成長に陥っていたが、11年は0.8%と3年ぶりにプラス成長に転じた。

<農林水産業と建設業が回復>
韓国銀行が発表した報道資料(注1)や韓国主要紙の報道を元に、その概要を紹介すると次のとおり。

同銀行は2011年の北朝鮮経済が3年ぶりにプラスに転じたのは、農林水産業と建設業の好調によるものと分析している(表1参照)。農林水産業部門は、気象条件が好転して日照時間が長かったことや肥料の投入量が増大したことで、コメやトウモロコシの作柄が良く、前年比5.3%増となった。建設業は、「強盛大国」実現に向けた平壌市の近代化事業により住居用建物の建設が寄与して3.9%増になった。また、鉱業部門は石炭の増産により0.9%増になった。しかし、製造業部門は振るわず、09年の3.0%減、10年の0.3%減に続き、11年も3.0%減と低迷している。とりわけ重化学工業の不振(11年は4.2%減)が目立つ。

表1北朝鮮の産業別成長率

<農林水産業の比重高まる>
GDPに占める産業別構成比をみると、農林水産業が2010年の20.8%から11年は23.1%に拡大している(表2参照)。鉱工業部門も36.3%から36.5%に拡大しているが、これは鉱業部門の寄与による。一方、サービス業は31.0%から29.4%へ、建設業は8.0%から7.9%へ、電気・ガス・水道業も3.9%から3.1%に低下している。

表2北朝鮮の産業構造(注1)

<名目国民総所得は韓国の38分の1>
2011年の北朝鮮の名目国民総所得(GNI)は、韓国の通貨基準で換算すると32兆4,000億ウォンで、韓国(1,240兆5,000億ウォン)の38分の1の水準となる。また、1人当たりの国民総所得は133万4,000ウォン(約1,204ドル)で、韓国の2,492万ウォン(約2万2,491ドル)の19分の1の規模にとどまっている(注2)。

<対外貿易規模は63億ドル>
2011年の南北間交易を除いた北朝鮮の貿易規模は63億2,000万ドル(表3参照)。このうち、輸出は前年比84.2%増の27億9,000万ドル、輸入は32.6%増の35億3,000万ドルとなっている。

また、韓国と北朝鮮との間の南北間交易は前年比10.4%減の17億1,390万ドルで、そのほぼ全ての搬出入は開城工業団地(注3)関連のものだ(表4参照)。

表3北朝鮮の対外貿易規模(南北間交易は除く)
表4南北間交易の推移

(注1)韓国銀行は南北の経済力比較が容易にできるよう、国連の国民経済計算体系(SNA)を基準に推定した結果をまとめ、1991年から公表している。
(注2)1人当たりの名目国民総所得のドル表示は韓国銀行発表の2011年平均レート、1ドル=1,107.99ウォンで換算したもの。
(注3)開城工業団地は南北経済協力の象徴として、北朝鮮の開城市とその周辺に造成されることが2000年の南北首脳会談で決まり、04年12月から韓国入居企業の生産が開始された。現在123の韓国企業が操業しており、そこで働く北朝鮮の従業員数は、統一部によると11年末現在4万9,866人に達している。

(柳忠鉉、根本光幸)

(北朝鮮・韓国)

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