ユーロ圏首脳会議、ESMから銀行に直接資金注入で合意

(ユーロ圏、欧州)

ブリュッセル発

2012年07月03日

ユーロ圏17ヵ国の首脳は6月29日、銀行とソブリン債との悪循環を断ち切るため、欧州中央銀行(ECB)による単一の銀行監視メカニズムの設立と、欧州安定メカニズム(ESM)から銀行に資金を直接注入できるようにすることで合意した。スペインの銀行への資金注入は、ESMが発足するまでは欧州金融安定化ファシリティー(EFSF)が行う、と確認した。

<スペインの銀行へは当面EFSFから資金注入>
6月28日の欧州理事会(EU首脳会議)の後、同日深夜から始まったユーロ圏首脳会議は29日早朝4時過ぎまで続けられた。その結果、発表された声明(PDF)の主な内容は次のとおり。

○ユーロ圏首脳会議は、銀行とソブリン債との悪循環を直ちに断ち切らねばらないことを確認した。欧州委員会は、「EUの機能に関する条約」の第127条第6項の下で、銀行の単一監視メカニズムのための提案を短期間に行う。ユーロ圏首脳会議は理事会に、これらの提案を緊急課題として2012年末までに検討するよう要請する。ECBを含めた効果的なユーロ圏の単一銀行監視メカニズムが設置されれば、決定規則に従い、ESMは銀行に資金を直接注入できるようになる。銀行へ資金の直接注入は補助金規則との整合性を含んだ適切な条件下で行われることが重要で、覚書(MOU)の下で形式を整える。ユーログループ(ユーロ圏財務相会合)はアイルランドの金融部門の状況について、順調な調整プログラムの持続可能性の一層の改善を検討する。類似ケースは同様に扱われるものとする。

○ユーロ圏首脳会議は、スペインの銀行部門への資金注入のための財政支援に附随するMOUの結論を急ぐよう要請した。財政支援はESMが立ち上がるまではEFSFによって供与されること、そしてESMに引き継がれることを確認した。

○ユーロ圏首脳会議は、ユーロ圏の財政安定化を確実にするために必要なことを行う強いコミットメントを確認した。特に既存のEFSF/ESMの手段を利用し、加盟国の市場を安定化させるために柔軟で効果的な方法で行う。その際に、国別勧告に加えて、ヨーロピアンセメスターや成長安定協定、マクロ経済不均衡是正手続きを含むその他の約束を尊重する。そして、これらの条件はMOUに反映させるべきとした。ユーロ圏首脳会議はまた、ECBが効果的な方法で市場オペレーションを行うEFSF/ESMの代理人として奉仕することに合意したことを歓迎した。

○ユーロ圏首脳会議は、これらの決定を12年7月9日までに実施するようユーログループに要請した。

6月29日早朝の記者会見で、欧州委のバローゾ委員長は「銀行への資本注入はとても厳しい条件の下で行われる」と強調した。また、記者からは、新しいメカニズムの設立が遅れており、スペイン救済にメカニズムが適用されるようにはみえないことや、このメカニズムは具体的にどの国を対象としたものか、という質問があった。これに対し、首脳会議の声明を準備した作業グループの委員長が首脳会議のファンロンパウ常任議長に代わって回答し、まずは新メカニズムの速やかな立ち上げを急ぎ、メカニズムが立ち上がり、スペインに対しても条件がそろえば、切り替えて利用していくことなどを説明した。

(田中晋)

(ユーロ圏)

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