輸入取引に宣誓供述書の提出を義務付け−保護主義政策強まる−

(アルゼンチン)

サンパウロ発

2012年01月17日

公共歳入連邦管理庁(AFIP)は1月10日、すべての消費財の輸入取引に対して2月1日から事前に宣誓供述書(DJAI)の提出を義務付けると発表した。近年、貿易黒字の維持などを理由に保護主義政策が続けられているが、それがさらに加速する見通しになった。

<突然の発表で混乱、輸入業界は批判>
AFIPは1月10日、同庁決議第3252/12号を発表し、2月1日からすべての消費財の輸入取引に対し、事前にDJAIの提出を義務付けた。

発表によると、輸入企業は消費財商品を購入する前に、AFIPのウェブサイトに掲載されるDJAIの書式に必要なデータを入力し、貿易庁などの関連機関による輸入許可を得なければならない。関連機関は一定期間のうちに、輸入を許可するか否かを判断し、AFIPが輸入企業に関連機関の決定を連絡する。また、許可しない場合、その理由も連絡する。許可された後、通関申告時にはマリア管理システム(SIM)を通じてDJAIの番号が求められ、関連する機関に確認が行われる。

この発表に当たって、関係者の間で混乱が生じた。発表直後、DJAIの書式はAFIPのウェブサイト内に掲載されておらず、輸入許可を与える関連機関が許可を出すまでの期間も定まっていなかった。輸入業者協会(CIRA)のサンティステバン会長は「この決議の意図が理解できない。すべてはウェブサイトで明らかにすると言っているが、そのウェブサイトも存在しない。決議の存在自体が理解に苦しむ」と批判した。

その後、国内商業庁は1月13日、同庁決議第1/2012号で、同庁がAFIP決議第3252/12号に賛同すること、輸入許可などに対する通告はDJAI受理後、15営業日以内に実施すること、この措置は12年2月1日から実行することを発表した。また、輸入は国内商業に影響するため、同庁は国内市場が損なわれないよう調査する必要があるとの姿勢を明らかにした。

<貿易黒字の維持が最大の目的>
今回の一連の決議は、為替取引の抑制と貿易黒字の維持が最大の目的といわれる。これらによって中央銀行の外貨準備高を保ち、債務返済などに利用するとみられる。貿易黒字は年々減っており、11年1〜11月は100億6,700万ドルと前年に比べ14億4,800万ドル少なくなっている(図参照)。

貿易収支額の推移

現地メディアは、11年来貿易保護主義政策として行われている非自動輸入ライセンス制度の対象拡大や、輸出入均衡措置などを主導しているモレノ国内商業庁長官の影響力が高まったことを伝えている。また、政府内で保護主義の考え方は徹底しつつあり、エチェガライAFIP長官は11年末に税関で開催された会合で、貿易会社などの関係者を前に「輸入は忘れろ」と発言していた。

<少雨で一次産品輸出に黄信号、貿易黒字達成にも限界>
政府としては、キルチネル前政権期から実績を残している貿易と財政の双子の黒字を死守したいとの意向から、保護主義政策を次々に繰り出しているが、別の方向から行き詰まりが出始めている。

ここ数ヵ月の少雨によって、輸出を牽引する大豆やトウモロコシといった一次産品の輸出が大幅に減る可能性が出てきたからだ。トウモロコシの主要産地のブエノスアイレス州では過去40年間で最低の降雨量と報じられ、一次産品の生育に少なからぬ影響を与えかねない。アルゼンチン農業連盟(FAA)などは政府に対策を求めていく方針と報じられている。

輸出額に悪影響が見込まれる中で、製品の輸入を絞り上げていくことで貿易黒字の達成を求める政府の手法にも限界がみえつつあるともいえる。11年12月に発足した第2期フェルナンデス政権は難しいかじ取りを迫られている。

(紀井寿雄、シルビア・ヤマキ)

(アルゼンチン)

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