政権交代、ラホイ新内閣が発足−経済緊急措置法は年末の閣議で承認へ−

(スペイン)

マドリード発

2011年12月26日

新首相指名投票が12月20日、下院(定数350)で行われ、11月の総選挙で圧勝した中道右派・民衆党(PP)のマリアノ・ラホイ党首が過半数を得て首相に選出された。翌21日に首相に就任し、新内閣が発足した。本格的な経済財政策は30日に発表される予定。

添付ファイル: 資料PDFファイル( B)

<欧州債務危機対応を意識した閣僚人事>
新内閣は省庁再編により、前政権時よりも2省少ない14省・府となった。最も重要な変更は、従来の経済省を財務・公共行政省と経済・競争力省に分割した点だ。それぞれに、現在のスペインの最大の課題である財政健全化と経済再成長を個別に担当させる。

財務・公共行政省は、自治州・地方自治体関係も担当し、赤字削減で最も懸念される自治州も含めた包括的な財政健全化を目指す。また経済・競争力省は、従来の科学・イノベーション省の業務を吸収し、研究開発(R&D)や中小企業支援も含めた経済構造のテコ入れに取り組む。また、これまでの文化省と教育省は教育・文化・スポーツ省に統合された。

閣僚人事は、首相以下14人のうち女性は4人で前政権時から3人減少。副首相(兼首相府相)には、野党時代に同党の下院院内総務を務めたソラヤ・サエンス・デ・サンタマリア氏が最年少(40歳)で任命された(添付資料の表1参照)。

他方、財務・公共行政相には、2000〜04年のPP政権でも財務相としてユーロ導入を指揮したクリストバル・モントロ氏が就任。また、経済・競争力相には、唯一の非政治家で前回のPP政権で経済長官を務めたルイス・デ・ギンドス氏が任命されるなど、財務・経済面はベテランで固められた。

<具体的な経済財政策は12月30日以降>
12月23日には第1回閣議が招集されたが、長官ポストが決定されただけで、事前の予想に反して経済財政措置は発表されなかった。政府は、12月30日の年内最後の閣議で、暫定予算をはじめとする緊急措置法を承認することを明らかにした。

欧州債務危機の中、市場からも注目される経済再成長に向けた新政権のロードマップについては、ラホイ首相が19日、新首相選出前に行った演説である程度明らかにされている。本格的な財政再建、金融再編、労働市場改革をベースに、経済刺激と雇用創出を図るというもので、おおむね総選挙のマニフェストに沿った内容になっている。

最優先政策の財政再建では、年金以外のすべての歳出を削減する。原則的に増税はせず、公営企業などの統廃合や行政コスト削減を通じて12年に総額165億ユーロの歳出削減をするとした。ただし、これは11年の財政赤字目標のGDP比6%達成を前提としたあくまでも暫定的な数値で、達成されない場合は削減の拡大や増税という可能性も見え隠れする(添付資料の表2参照)。

ラホイ首相は「自分は人気者になるためではなく、この深刻な状況の解決を図るために首相になった」として、痛みを伴う改革への決意を明確にしており、ひとまずはPP政権の危機対応手腕に期待が寄せられる状況だ。

12月20日のスペイン国債入札では、3ヵ月物と6ヵ月物の平均利回りが前回入札時の半分以下に低下した。ただし、これは財政再建のアナウンスメント効果だけではなく、欧州中央銀行(ECB)による大規模な3年物流動性供給オペが決定されていたことも大きいとされる。

(伊藤裕規子)

(スペイン)

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