11/12年度のGDP成長率予測、3.25%に下方修正−中間経済・財政見通し−

(オーストラリア)

シドニー発

2011年12月14日

政府は11月29日、「2011/12年度(11年7月〜12年6月)中間経済・財政見通しに関する報告書(MYEFO)」を発表した。同年度の実質GDP成長率を3.25%と予測し、5月に発表した政府予算書の予測から0.75ポイント下方修正した。財政支出を見直すことで、公約どおり12/13年度以降、財政の黒字化を見込んでいる。

<下方修正幅は0.75ポイント>
11年の経済は、年初の水害の影響により石炭の輸出が停滞したことなどから、第1四半期のGDPが前期比でマイナス1.2%と大きく落ち込んだ。第2四半期は、自然災害からの回復と消費の堅調な伸びなどで大きく反転して1.2%と4年ぶりの高い伸びになったが、10/11年度の成長率は1.8%にとどまり、政府が想定した2.25%には届かなかった(2011年9月13日記事参照)。多くのエコノミストは、MYEFOで11/12年度の経済見通しは下方修正されるとみていた。

今回のMYEFOで注目されていたのは、経済成長をどの程度見直すかに加えて、労働党政権が公約としていた12/13年度の財政を黒字化できるかだった。

経済見通しについてMYEFOは、資源分野の記録的な開発計画と強い輸出によって成長は押し上げられるとしながらも、最近数ヵ月の世界的な経済・金融情勢が、オーストラリアの為替、株式や、鉄鉱石、石炭などの資源価格に深刻な影響を与えているとしている。11/12年度の経済成長率を5月の政府予算書に比べて0.75ポイント下方修正して3.25%に、12/13年度も0.5ポイント下方修正して3.25%に正し、13/14年度は3.00%で据え置いた。

失業率については、最近では非鉱業分野の勢いが減少していることが明らかになっており、雇用の伸びが鈍化してより軟調になるとして、11/12年度は5.50%(予算書4.75%)、12/13年度も5.50%(同4.50%)へと見直している。

<12/13年度以降の財政黒字化は達成の見込み>
一方、財政収支については、5月の予算書による11/12年度の基礎的財政赤字(現金ベース)は226億1,800万オーストラリア・ドル(豪ドル、1豪ドル=約78.45円)から、MYEFOでは371億1,300万豪ドルと、赤字額が64.1%、約145億豪ドル増加している(表参照)。

この理由として、直近の経済情勢が弱含みのため、短期的な税収の落ち込みが48億豪ドル、自然災害への復興対策などに23億豪ドルの支出増が見込まれることなどを挙げている。また、12/13年度は公約どおりに黒字を計上するものの、黒字額は14億7,900万豪ドルと予算書で予測した34億9,800万豪ドルの半分以下で、GDP比はわずか0.1%にとどまっている。なお、13/14年度は18億6,400万豪ドルの黒字を予測している。

今回のMYEFOでは、12年7月からの導入が決まっている炭素価格制度のほか、同月からの導入が予定されている鉱物資源利用税(MRRT)収入も予算に組み込まれている。

経済見通し (MYEFO)

<向こう4年間で115億豪ドルの歳出を見直す>
MYEFOは、大幅な税収の減少が見込まれる中で、12/13年度以降の財政を黒字化するため、向こう4年間で115億豪ドルの歳出を見直すとしている。なお、炭素価格制度の導入に伴う歳出見直しもあり、ネットでの削減額は68億豪ドルにとどまっている。

主な予算見直し策としては、a.12年9月1日以降、新生児出産手当を5,400豪ドルから5,000豪ドルに削減し、向こう4年間で3億2,000万豪ドル削減、b.技能労働とビジネスビザの発給手数料を5〜15%引き上げ、向こう4年間で6億1,300万豪ドルの歳入を確保、c.連邦公務員と高等教育部門予算の削減を行う、などとしている。

オーストラリア商工会議所(ACCI)経済・産業政策部長のグレイグ・エバンス氏は、「12/13年度から財政収支を黒字化させる計画を歓迎する。しかし、68億豪ドルの歳出削減では、継続した黒字につながらない可能性がある。世界経済の健全性が懸念される状態でオーストラリアが財政黒字の目標を設定することは、金融政策の裁量の余地を狭めることになる」とコメントしている。

(込山誠一郎)

(オーストラリア)

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