密輸防止図り電子・電気など5分野で輸入規制−中国製品の波及によるアジア各国市場への影響(3)−

(インドネシア)

ジャカルタ発

2009年02月23日

密輸入品を含め、中国からの廉価品の流入は従来から問題視されていたが、今後はさらに事態が深刻化すると懸念されている。政府は、特に密輸が多い5分野について、2009年1月から輸入規制を導入して対策に乗り出したが、早くもその効果を疑問視する声が出ている。中国製廉価品の大量流入で国内産業が大きな打撃を受けることは避けられそうにない。

<対象は電子・電気、既製衣料、飲食料、玩具、履物>
政府は、08年10月28日に発表した緊急経済対策の中の1項目として、中国などからの密輸入被害が大きい電子・電気製品(部品を含む)、既製衣料品、食品・飲料、玩具、履物の5分野の特定製品(505製品)について、輸入規制措置を導入して密輸防止策を強化している。

輸入規制導入の目的と内容は以下のとおり。

○世界的な景気後退の影響で、欧米諸国や日本などの先進国の消費が低迷し、中国などからの密輸品の流入拡大が予想されるため、密輸品を規制して、関連する国内産業の保護と雇用の確保を図る。

○密輸の多い対象製品について、輸入業者と輸入港を明確化し、船積み前検査を行うことで、製品自体の確認と流通経路の明確化を図る。輸入データを蓄積し、密輸防止を含めた今後の対策に活用する。

国内販売に占める密輸品の割合が35%にも上るとされる家電業界では、輸入規制が国内メーカーにとっては追い風になると歓迎する声が聞かれる。一方で、繊維協会(API)によると、衣料品は製造業者などの詳細情報の調査が難しく、輸入規制に応じた合法的な輸入が困難になることから、さらに密輸が増加する可能性が高い。同協会のスドラジャット副会長は、中国からの繊維製品の密輸は倍増する恐れもあると警告している。

<タイヤや食器でも廉価品の大量流入を警戒>
輸入規制の対象となった5分野以外でも、タイヤ、食器などで、中国などからの廉価品の流入への警戒感が広がっている。インドネシアタイヤ協会によると、偽造の国家規格(SNI)がつけられた輸入タイヤが国内市場で大量に流通している。四輪用タイヤは中国とインド、二輪用タイヤはベトナムやタイからの輸入とされており、当局の監視が手薄な地方の小規模港から違法に荷揚げされているとみられる。これらの価格は国内製品より25%程度安く、国内メーカーに大きな被害を与える可能性が強い。

また、インドネシアプラスチック・オレフィン産業協会(INAplas)によると、中国製のメラミン食器の輸入が増加傾向にある。この食器は、有害物質を含む規格外の製品で、市場価格を大幅に下回る価格で販売されており、不当廉売の可能性も指摘されている。同協会は、廉価品が氾濫することで、国内の食器製造業が大きな打撃を受けると警戒している。

<保護主義的な動きにも警戒を>
景気低迷の時期にこそ、懸案だった密輸防止を強化するという政策は一定の評価を得ているとみられるが、輸入規制が十分な効果を上げることができるかについては、繊維業界のように否定的な声もある。鉄鋼業界などでは輸入関税の引き上げを求める声も出ており、保護主義的な動きにも警戒が必要だろう。

(塚田学)

(インドネシア)

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