化粧品EC企業、オムニチャネルで顧客との心のつながり育む

(バングラデシュ)

ダッカ発

2023年01月16日

バングラデシュでは、経済発展に伴って化粧品市場が急速に拡大している。eコマースとリアル店舗を組み合わせたオムニチャネル形式で化粧品を販売しているのが、地場スタートアップのシャズゴジ(Shajgoj)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますだ(2021年6月14日付地域・分析レポート参照)。同社のファルハナ・プリティ事業開発責任者に話を聞いた(2022年12月18日)。

(問)シャズゴジのサービスの特徴、他社との差別化ポイントは。

(答)非正規のルートで商品を調達し、より低価格で商品を販売している伝統的な路面店やFコマース(注)の店舗が多数存在する中、価格にセンシティブなバングラデシュ市場で成功するための戦略として、顧客との「心のつながり」を築くことを大切にしている。そのために弊社ではさまざまな取り組みを行っている。まず、模倣品の化粧品が多数流通しているが、弊社では正規のディストリビューターのみを通して調達を行うことで、正規品のみを販売している。また、伝統的な路面店では化粧品に関する知識に乏しい男性店員しかいないケースが多いが、弊社には70人のビューティーアドバイザー(うち9割が女性)が在籍している。アドバイザーが化粧品に関する正しい知識・情報を動画や記事形式で発信するとともに、リアル店舗や電話、チャットなどでの顧客からの質問に対応する体制を整えている。さらに、弊社の顧客向けフェイスブックグループには約13万人のメンバーが参加しており、消費者同士が相互に情報交換できる場となっている。直近の取り組みとしては、女性限定のコンサートを企画し、顧客を招待した。バングラデシュでは、安全面や社会的な制約があり、女性1人でコンサートに行くことが難しいため、このような機会は顧客にとって貴重な経験となる。

(問)リアル店舗とeコマースでの現在の販売状況、今後の方針について。

(答)現在、総売り上げの約9割はeコマースでの販売となっている。新型コロナ禍以降、eコマースに関わるインフラ整備も進んでおり、弊社ではレデックス(REDX)、パタオ(Pathao)、イークーリエ(eCourier)、ペーパーフライ(Paperfly)の4社の配達サービスを利用することで、ダッカ市内であれば注文から1日、地方でも2~3日で配達可能だ。

一方で、消費者とのつながりをより深められる場、消費者が実際に商品を試せる場として、リアルの店舗数も拡大していく方針で、現在の4店舗(いずれもダッカ市内)から3年以内には100店舗まで増やすことを目指している。現在、eコマースの売り上げのうち61%がダッカ市内、39%が市外の地域向けとなっている。今後はチョットグラムやシレットなどの地方都市にもリアル店舗を出店することを計画している。商品を試せる場を地方都市にも創出することで、ダッカ以外の地域への販売も伸ばしていく狙いだ。

(問)貴社では既に多数の韓国化粧品を取り扱っているが、日本の化粧品の可能性は。

(答)バングラデシュでは日本ブランドの品質に対する信頼性は高く、日本企業が得意とするスキンケア商品への需要も高まっているため、ポテンシャルは十分あると感じる。

一方で、やはり一番の課題は価格だ。弊社で扱っている商品の単価のボリュームゾーンは400~1,000タカ(約480~1,200円、1タカ=約1.2円)程度で、3,000タカを超えるような高価格商品への需要は限られている。日本の商品を扱う上では、100%を超える高額の輸入税がネックとなるため、国内で生産することも1つの選択肢として想定される。

求められる製品の特徴としては、東南アジア諸国などと同様に、美白効果のある化粧品への需要が高い一方で、アンチエイジングへの需要はまだ大きくない。また、消費者が気軽にトライアル用に商品を購入できるよう、小容量の商品のラインナップを準備することも重要だと考える。

写真 シャズゴジの実店舗(シャズゴジ提供)

シャズゴジの実店舗(シャズゴジ提供)

写真 ファルハナ・プリティ事業開発責任者(本人提供)

ファルハナ・プリティ事業開発責任者(本人提供)

(注)フェイスブックを利用して売買を行うビジネス形態を指す。

(薄木裕也、イスラット・ジャハン)

(バングラデシュ)

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