在マレーシア日系企業の営業利益見込み、前年比で大幅改善

(マレーシア)

クアラルンプール発

2022年02月09日

ジェトロは2月8日、2021年度「海外進出日系企業実態調査アジア・オセアニア編」のうち、マレーシアを含むASEAN6カ国(マレーシア、シンガポール、タイ、インドネシア、ベトナム、フィリピン)の結果を抽出した分析を発表した(添付資料参照)。営業利益見込みや今後の事業展開に関する回答率からは、在マレーシア日系企業の「新型コロナ禍」からの回復が見て取れるとともに、脱炭素化やデジタル、人権問題といった企業課題に取り組む姿勢もうかがえた。

2021年の営業利益見込みを「黒字」と回答したのは、調査対象の在マレーシア日系企業のうち59.7%だった。同年中の操業規制強化などで稼働率が低下したことを背景に、ASEAN主要6カ国の中では相対的に低い比率になったが、前年(50.0%)からは10ポイント近く改善した。とりわけ大企業の黒字比率が67.7%と高かった。2022年の営業利益見通しにおいても、「改善」するとの回答は58.7%となり、前年の35.0%から大幅に上昇した。

在マレーシア企業の今後1~2年の事業展開の方向性については、「拡大」すると回答した企業の比率が、前年の36.1%から43.2%へと回復。拡大する機能としては、「販売機能」(51.2%)、「生産機能(高付加価値品)」(37.8%)、「生産機能(汎用品)」(36.6%)と回答が分散し、機能の多角化がみられた。他方で、マレーシアにおける経営上の問題点としては、「従業員の賃金上昇」(64.2%)が例年と変わらず最大の課題として挙がり、「従業員の質」(60.7%)、「競合相手の台頭(コスト面で競合)」(48.5%)、「新規顧客の開拓が進まない」(48.0%)といった項目がそれに続いた。

今回の調査では、脱炭素化(温室効果ガスの排出削減)やデジタル技術への取り組み状況、サプライチェーンと人権(適切な労働慣行・労働安全衛生の確保など)に対する認識などについても聞いたところ、在マレーシア企業はいずれの企業課題に対しても一定の取り組みを推進していることが分かった。中でも、脱炭素化に「すでに取り組んでいる」企業の割合は、ASEAN主要6カ国中で最も高い37.1%を記録した。具体的には、省エネ・省資源化、再エネ・新エネ電力の調達、環境に配慮した新製品の開発などが、取り組み内容として多く挙がった。マレーシア政府は、2030年までに温室効果ガス排出量を2005年比で45%削減する目標を掲げており、中期目標である第12次マレーシア計画でもグリーン成長の推進に言及するなど、その実現に向けた政策を強化しつつある。こうした政府の動きが、進出日系企業の認識にも影響を与えた可能性がある。

(吾郷伊都子)

(マレーシア)

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