鉄筋用棒鋼と線材に3年間のセーフガード関税発動-日本企業への影響は軽微か-

(マレーシア)

クアラルンプール発

2017年05月10日

 マレーシア国際貿易産業省(MITI)は4月13日に鉄筋用棒鋼、14日に線材・バーインコイルについて、輸入品が国内産業・製品に深刻な損害を与えていると認定した。これにより、日本を含む対象国からの当該輸入品に、セーフガード関税を14、15日からそれぞれ2020年までの3年間課す。日本からの輸入品については、もともと量が少ない上、主要品目が対象外となったことから、影響は限られそうだ。他方、マレーシアの消費者へのコスト負担増が懸念されている。

セーフガード税率は段階的に縮小

MITIは、国内鉄鋼業界を代表するマレーシア鉄鋼協会(MSA)からの、両品目の輸入増加により国内産業に深刻な影響が及んでいるとする訴えを受け、鉄筋用棒鋼、線材・バーインコイルに対するセーフガード調査を2016年5月28日、29日にそれぞれ開始する旨を発表していた。政府は調査を継続すると同時に、暫定セーフガード税率として、鉄筋用棒鋼については13.42%(2016年9月26日~2017年4月13日の期間)、線材・バーインコイルについては13.90%(2016年9月27日~2017年4月14日の期間)を課していた。

政府は4月13日と14日に調査実施による最終決定として、それぞれの品目について、セーフガード関税を発動することを官報で公示した。同官報によると、棒鋼については日本を含む40ヵ国からの輸入品を対象に、2017年4月14日から2020年4月13日までの3年間、賦課される。税率は1年目に13.42%と設定され、2年目、3年目はそれぞれ12.27%、11.10%となる(表1参照)。他方、線材・バーインコイルについては日本を含む42ヵ国を対象に、2017年4月15日から2020年4月14日までの3年間、各年でそれぞれ13.90%、12.90%、11.90%が賦課される。

表1 セーフガード税率の今後
(単位:%)
種類 期間 税率
鉄筋用棒鋼 2017年4月14日~2018年4月13日 13.42
2018年4月14日~2019年4月13日 12.27
2019年4月14日~2020年4月13日 11.10
線材・バーインコイル(鉄筋用) 2017年4月15日~2018年4月14日 13.90
2018年4月15日~2019年4月14日 12.90
2019年4月15日~2020年4月14日 11.90

(出所)国際貿易産業省(MITI)資料

輸入シェアが少なく、適用対象外が多い日本製品

両品目の国・地域別輸入(2016年)を数量ベースでみると、ともに中国が最大の輸入相手国だ(表2参照)。2016年の中国からの鉄筋用棒鋼輸入は前年比31.9%増の159万トンで、全体の91.3%を占める。中国に続くシンガポール、香港、韓国、トルコを含めた上位5ヵ国・地域で全体の98.5%を占める。

他方、日本からの輸入量は前年比23.4%減の8,855トン、輸入シェアは0.5%にとどまった。2011年から2015年の5年間の平均輸入量をみても年間8,660トンで、シェアは高くない。

セーフガード対象品目の輸入量上位5ヵ国・地域(2016年)
表2-1 鉄筋用棒鋼(単位:トン、%)
順位 国・地域 輸入量 構成比
1 中国 1,591,650 91.3
2 シンガポール 86,473 5.0
3 香港 14,779 0.8
4 韓国 12,125 0.7
5 トルコ 11,421 0.7
表2-2 線材・バーインコイル(鉄筋用)(単位:トン、%)
順位 国・地域 輸入量 構成比
1 中国 523,838 54.1
2 韓国 211,642 21.9
3 シンガポール 83,236 8.6
4 日本 80,862 8.4
5 アラブ首長国連邦(UAE) 47,472 4.9

(注)鉄筋用棒鋼HS:721410、 721420、 721430、 721499、 722810、 722820、722830、 722840、
722850、 722860、 722880 、線材・バーインコイル(鉄筋用)HS:721310、 721391、 721399、 722790
(出所)グローバル・トレード・アトラス

線材・バーインコイルの輸入相手国・地域も、中国が前年比33.9%減の52万トンと最も多く、輸入総量の54.1%を占める。続く韓国、シンガポール、日本、アラブ首長国連邦(UAE)を含めた上位5ヵ国で全体の97.9%を占める。2016年の日本からの輸入量は12.9%減の8万トンで、輸入シェアは8.4%と比較的高いが、2008年以降は総じて減少傾向にある。

セーフガード関税の対象国のうち、ともに輸入量が多い中国産は大きな影響を受けるだろう。当該品目は、主に中国の地場メーカーが生産している。他方、日本産品については、鉄筋用棒鋼では対日輸入シェアが0.5%と高くないことや、線材・バーインコイルでは自動車、電機・電子、オイル・ガス、耐震建築用など日本からの輸入が多い品目は適用対象外とされているものが多く、影響は限定的とみられる。

消費者へのコスト負担増に懸念も

今回の措置について、国内銀行最大手のメイバンクは「セーフガード関税の発動で、当初の関税率と合わせて、2020年まで15~19%の関税率が課されるため、輸入は十分に抑制されるだろう」と肯定的に評価している(「ニュー・ストレーツ・タイムズ」紙電子版4月17日)。他方、マレーシア建築請負業者協会(MBAM)は4月14日、「セーフガード措置は建設計画コストを引き上げ、最終的な負担は消費者に転嫁される恐れがある」と憂慮している。また、不動産・住宅開発業者協会(REHDA)も同様に、「鉄鋼価格の上昇で、消費者は住宅購入時に価格上昇に直面する」と、警戒感を示した(「エッジ・ファイナンシャル・デーリー」紙4月20日)。

なお、対象品目・国など詳細は以下の官報を参照のこと。

(新田浩之)

(マレーシア)

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