大連市で「保税区モデル」の活用など始まる-越境EC新制度の過渡期政策が1月から適用-

(中国)

大連発

2018年03月08日

大連市では、1月1日から越境電子商取引(EC)新制度の一部の過渡期政策が適用されたことを受け、「保税区モデル」を活用した保税倉庫の稼働や、「オンライン・ツー・オフライン(O2O)体験館の新設などの動きがみられる。大手通販企業も進出しており、動向が注目されている。

保税倉庫を拡張・新設

大連市は2016年1月、国務院により12の越境EC総合試験区の1つに認定され、2018年1月1日からは越境EC新制度の一部の過渡期政策が適用された(2017年12月25日記事参照)。

過渡期政策とは通関手続きの簡素化のことで、通関証明書の提出の猶予に加え、化粧品、粉ミルクなど指定商品の初回輸入時の輸入許可証、登録、届け出が2018年末まで不要となっている。過渡期政策は、ECプラットフォームを通じ海外から直接中国国内の消費者に商品を販売する際に適用される。輸入スキームを大別すると「保税区モデル」と「直送モデル」の2つがあり、いずれも適用される。

「保税区モデル」では、越境EC商品を保税倉庫に搬入しておき、ECサイト経由で注文が入ると商品を配送する仕組みで、税関や検験検疫局と連携している既定の保税倉庫でなければならない。

現在、大連市内で「保税区モデル」として稼働している保税倉庫は、金瑪集団の子会社である順乾国際物流(大連)の1カ所のみだ。同市の保税区内にあり、当初からの稼働面積は倉庫と検査場を合わせて約5,000平方メートルに達するが、将来的に2万平方メートルまで拡張する計画だという。また、シンガポールの物流施設大手グローバル・ロジスティック・プロパティーズ(GLP)も大窯湾保税港区で2万平方メートルの保税倉庫の建設を進めており、将来的に6万平方メートルにまで拡張するとしている。

地元ネット通販が「モデル」を最初に利用

「保税区モデル」を最初に利用した企業は、一般貿易で日本や韓国から日用雑貨を輸入していた地元ネット通販の辣萍果(Lapingguo)だ。顧客数は270万人で、その7割強を東北3省が占める。同社の薛源董事は一般貿易と「保税区モデル」の違いについて、「当社が取り扱う商品の単価は高くないため、税金面では大差ない。過去に輸入が難しかった保健品や化粧品を保税区モデルで輸入できることが大きな魅力」と述べている。今後は日本に法人を設立し、これら商品の調達をさらに強化していく方針だという。

「直送モデル」では、メーカーやECサイト運営者が個々の注文について、海外から国際スピード郵便(EMS)などで消費者に個別配送を行う。大連市では海上輸送を利用した「直送モデル」の活用を検討しているが、まだ正式にはスタートしていない。

O2O体験館をテストマーケットに

保税区政府は2月6日、同区内の自貿ビル2階に越境ECの「オンライン・ツー・オフライン(O2O)」体験館をオープンした。面積は約7,000平方メートルで、日本、韓国、ロシア、欧州などの商品を取り扱う企業を中心に13社が入居している。

同体験館への入居理由としては、一般消費者向けのテストマーケティングとして活用するという声が多い一方、「今後は保税区政府による企業向けPRの強化により、東北3省の企業の視察が増える見込みで、自社の代理店開拓につながることを期待する」とB2B(企業間取引)を強化する意向の企業もみられた。

大手通販が保税区に進出

大連市は東北地域唯一の越境EC総合試験区だ。中国国内では日本と韓国に最も近く、両国の商品を輸入して、東北3省で販売する上では物流面での優位性がある。先発組の浙江省杭州市、寧波市、広東省広州市、鄭州市などと比べ、大手通販サイト運営企業の入居数、地元政府の支援体制、保税倉庫の整備などの面で後れを取っているものの、大連市の越境ECの将来性を見据えて進出する大手企業もみられる。消費者向けのECサイトを運営し、正規商品の廉価販売を行う唯品会は2017年11月、保税区内に物流企業を設立した。同社は国内に2億人を超える会員を有しており、こうした大手通販サイト運営企業が入居したことで、越境ECのさらなる活発化が期待されている。

過渡期政策は2018年末が期限となっているが、消費者の越境EC商品への需要が旺盛で、しかも現場での混乱を避ける対策がまだ整備されていないため、2019年以降も継続されるとの見方が大勢を占めている。

(呉冬梅、辛薇)

(中国)

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