シンガポールとラオスが炭素クレジット実施協定を締結

(ラオス、シンガポール)

ビエンチャン発

2026年09月10日

シンガポールとラオスは2026年9月4日、パリ協定第6条に基づく炭素クレジット協力に関する2国間実施協定に署名した。ラオス国内の温室効果ガス排出削減事業から創出される炭素クレジットの承認と国際移転について、法的拘束力のある枠組みを定めている。シンガポールにとって12カ国目の実施協定となる(注1)。

今回の実施協定により、二重計上を防止するための相当調整(注2)を伴う炭素クレジットの承認・移転について、国際移転に向けた法的枠組みが整った。

シンガポールは、国土面積や再生可能エネルギー資源に制約を抱えるため、国際炭素クレジット(ICC)を温室効果ガス削減目標の達成手段の1つに位置付けている。同国では、炭素税率は2026年1月1日から二酸化炭素(CO2)換算1トン当たり45シンガポール・ドル(約5,463円、Sドル、1Sドル=121.4円)となり、2030年までに同50~80Sドルに引き上げる方針だ。

シンガポールでは、炭素税の対象企業が、適格性要件を満たす高品質な国際クレジットを課税対象排出量の最大5%まで利用できる。今回の協定に基づくクレジットも、所定の要件を満たせば、同制度の対象となり得る。また、これらのクレジットは「国が決定する貢献(NDC)」の達成や、国際民間航空機関(ICAO)が運用する国際航空のためのカーボンオフセットおよび削減スキーム(CORSIA)などの国際的な排出削減義務の履行への利用も想定される。

協定では、承認された炭素クレジットによる収益の5%を、ラオスの気候変動適応策に振り向ける。また、相当調整の対象として承認された炭素クレジットの2%を初回発行時に取り消す。取り消されたクレジットは売買ができず、いずれの国の排出削減目標にも計上されないため、世界全体の排出量の純削減に追加的に貢献する。

一方、ラオスでは、2025年8月施行の「カーボンクレジットに関する政府令292号」第24条により、2国間または多国間協力で取得したクレジットの少なくとも10%を、ラオス政府の持ち分として留保することが義務付けられている(2025年6月13日記事参照)。

現時点では、この10%の政府留保と、実施協定に基づく2%の取り消しをどの段階で、どのように計算・処理するかは明らかになっていない。今後、具体的なプロジェクトの承認手続き、適格な算定方法、クレジットの配分・処理方法など、運用の詳細が注目される。

(注1)シンガポールは今回の協定に先立ち、パプアニューギニア、ガーナ、ブータン、ペルー、チリ、ルワンダ、パラグアイ、タイ、ベトナム、モンゴル、フィリピンの11カ国と炭素クレジット協力に関する実施協定を締結している(2026年5月7日記事参照)。

(注2)相当調整(Corresponding Adjustment)とは、国際移転された排出削減量が、クレジットの移転国と取得国の双方で重複して計上されることを防ぐための措置。ラオスがシンガポールへの国際移転を承認し、相当調整を行った排出削減量は、原則としてラオス自身のNDC達成分には計上できない。

(山田健一郎)

(ラオス、シンガポール)

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