カーボンクレジットに関する政府令を発布

(ラオス)

ビエンチャン発

2025年06月13日

ラオス政府は5月28日付で「カーボンクレジットに関する政府令292号外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」を発布した。8月1日から施行する。同政府令は、カーボンクレジットに関する戦略策定や国際協力、ビジネス、登録、許可証発行、社会参加などを包括的に規定した法律で、2024年9月6日付で発布した「森林カーボン管理に関する農林大臣合意4565号」(2024年9月30日記事参照)に続くものだ。

第8~13条では、カーボンクレジット事業を次の6分野と定めた(注1)。

  1. 農林業〔例:REDD+(注2)、農業・畜産など、管轄:農業環境省〕
  2. エネルギー産業・環境保全型エネルギー事業(例:グリーン水素・アンモニア、クリーンエネルギー化など、管轄:商工省)
  3. 工業(例:グリーン工業など、管轄:商工省)
  4. インフラ・運輸・廃棄物業(例:グリーンシティー開発、廃棄物からのエネルギー生産など、管轄:公共事業運輸省)
  5. 水域・泥炭地保全事業(管轄:それぞれの土地分類を担当する省、ラムサール条約下では農業環境省)
  6. その他

上記のカーボンクレジット事業を行う場合は、商工省で企業登録を行い、上述した分野別に管轄省に事業許可を申請し(第15条)、その後、農業環境省に事業登録を行う必要がある(注3)。同登録証は事業主の権利を証明する書類となる(第21条)。なお、事業による利益の分配はあらかじめ契約書や事業可能性調査報告書などに明記しておく必要がある点に留意が必要だ(第30条)。

なお、カーボンクレジットの根拠となる温室効果ガス(GHG、注4)削減・吸収・蓄積量の算出と証明はベラ(Verra)、ゴールド・スタンダード(Gold Standard)、ART-TREESを含む独立機関の証明を受ける必要がある(第22条)。事業主は証明書類を農業環境省へ提出し、中央政府の売買認可を受ける必要がある(第23条)。売買認可を受けたカーボンクレジットの売却は、コンプライアンス市場、ボランタリー市場ともに可能で(第26条)、取引成立後10営業日以内に農業環境省へ届け出る必がある(第25条)。

その他、カーボンクレジット関連ビジネスとして、カーボンクレジット市場の運営やコンサルティングサービスは農業環境省からのライセンス取得が必要なことを規定した(第49条)。

(注1)農業環境省は農林省と水資源環境省の2つが合併してできる省、商工省は商工省とエネルギー鉱山省が合併し、新商工省となる計画だが、同政府令が発布された時点では、正式な合併前(2025年3月21日記事参照)。

(注2)ラオスでは、森林減少・劣化防止による排出量削減を達成した途上国政府に対して支払いを行うフレームワーク(REDD+)として知られる。

(注3)2カ国間、多国間協力などの場合は、それぞれの協力の契約に従うが、取得したカーボンクレジットの少なくとも10%をラオス政府の持ち分として留保する義務がある(第24条)。一方、民間ビジネスでは留保義務は規定されていない。

(注4)温室効果ガス(GHG)とは、二酸化炭素(CO2)、メタン、一酸化二窒素、六フッ化硫黄、フロン類などを指す。

(山田健一郎)

(ラオス)

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