カナダ産原油が日本到着、中東情勢悪化後で初、エネルギー調達の多角化進む
(カナダ、日本、中東)
調査部米州課
2026年08月13日
日本の高市早苗首相は8月12日、中東情勢悪化後初めて、カナダ産原油を積んだタンカーが日本に到着したことを、自身のSNS投稿で明らかにした。高市首相は今回の原油調達について、エネルギー調達の多角化を進める日本にとって「大変喜ばしく、日本のエネルギー安全保障の観点からも、意義深い」と述べた。
当該タンカーは、石油元売り大手ENEOSが調達した原油を搭載し、バンクーバーから鹿児島県の喜入町に向かったとされる(「ロイター」7月29日)。同社ウェブサイトによれば、喜入にはENEOSが所有する国内唯一の原油中継備蓄基地が所在する。5月31日には、赤澤亮正経済産業相が同基地を視察した。
2026年3月に行われたカナダのマーク・カーニー首相と高市首相の日加首脳会談では、両首脳が「日本・カナダ包括的戦略的パートナーシップ」に関する共同声明に署名し、エネルギー安全保障など6分野で協力することで合意した(2026年3月10日記事参照)。高市首相は、今回のカナダ産原油の調達について、両国間の戦略的パートナーシップの具体的事例として首脳会談で議論したと、自身のSNS投稿で述べた。
また高市首相は、官民連携の下、ホルムズ海峡を通らない代替調達に取り組んでいるとし、「中東や米国に加え、中南米、アジア太平洋、中央アジア、アフリカから、原油が届き、今回、ここにカナダが加わる」と述べ、中東情勢の緊迫化を受けたサプライチェーン多角化が具体化していることを強調した。日本にとって、カナダからの航路上にはホルムズ海峡などのチョークポイントがなく、わずか10日程度で原油を調達できることがメリットだ。その上で、原油の備蓄放出に頼ることなく調達を進め、国民生活と経済活動に支障を生じさせないよう取り組む考えを示した。
輸出先の多角化が進むカナダ産原油
カナダ産原油は、これまで米国向け輸出に大きく依存してきたが、米国市場への依存リスクや国際情勢の変化などを背景に、輸出先の多角化への関心が高まっている。カナダの主要な原油産地であるアルバータ州から太平洋沿岸部までは、「トランス・マウンテン・パイプライン」が敷設されている。2024年5月に完了した拡張工事をきっかけとしてアジア向けの原油輸出が増加しており、カナダ統計局(注1)によれば、カナダからの原油輸出総額に占めるアジア向けの割合は、2024年1~6月の約1.1%に対し、2025年1~6月は6.13%、2026年1~6月は約8.4%となっている(注2)。今回日本へ輸入された原油も、アルバータ州から同パイプラインを通じて輸送されたものとみられる。
カナダ政府は、自国を「安定的で信頼できるエネルギー供給源」と位置付け、アジアを含むエネルギー輸出先の多角化を進める方針を示している。こうした中、太平洋沿岸に接続する新たな原油パイプラインの敷設が計画されるなど(2026年7月6日記事参照)、同方針の具体化が進んでいる。
(注1)貿易統計データベース「グローバル・トレード・アトラス」(原典はカナダ統計局)による。
(注2)米国向け輸出の割合は、2024年1~6月の97.1%に対し、2026年1~6月は86.3%に減少。
(木村勇翔)
(カナダ、日本、中東)
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