米国際貿易委、中国とのPNTR撤回による米国経済への影響報告書を発表
(米国、中国)
ニューヨーク発
2026年08月27日
米国国際貿易委員会(USITC)は8月、米国と中国の恒久的正常貿易関係(PNTR)の撤回が米国経済に与える影響を分析した報告書
を公表した。中国からの輸入が減少するにつれ、一部の産業は生産を拡大して恩恵を受けるものの、中間財の輸入コストが上昇するため実質GDPはわずかに減少すると結論付けた。USITCは2026年2月、「2026年度商務・司法・科学・エネルギー・水資源開発・内務・環境歳出法」に付随する下院歳出委員会の報告書に基づき調査を開始していた(2026年3月2日記事参照、注1)。
米国の関税体系は、PNTRステータスを付与した国などに対する特恵税率(コラム1)と、特定国向けの高関税率(コラム2、注2)に分かれている。報告書では、中国製品にコラム2の関税率を適用した場合の影響を分析した。
報告書によれば、中国に対するPNTRを撤回した場合、関税率は2023年比で加重平均35.2ポイント上昇する。関税率の上昇により、米国の消費者と生産者は、中国からの輸入品に代えて米国内で生産された製品や他の貿易相手国・地域からの輸入品を調達するようになり、中国からの輸入はPNTR撤回から6年後に30.8%、長期的には73.8%減少すると推計した。一方、メキシコ、台湾、ベトナム、カナダ、日本、韓国からの輸入が増加すると分析した。
また、米国の消費者は0.7%、生産者は0.5%の価格上昇に直面し、中間財の価格上昇により、長期的には実質GDPが0.2%減少すると推計した。中国の輸入品と直接競合する製品は、中国からの輸入減少に伴い米国内の生産が増加するものの、その恩恵は中間財の価格上昇などにより相殺されると分析した。
産業別では、ほとんどの産業で実質GDPがわずかに減少するとしているが(通常は1%未満)、その影響は中国産の中間財への依存度などによって異なるとした。中国からの輸入が多いゲーム・玩具産業では、米国での生産量が最も大きく増加する一方、中国からの輸入が比較的少ない工業用繊維、工作機械、電動工具に関しては、原材料や設備の調達コスト上昇により、成長が抑制されると予測した。
ただし、報告書では最後に、「調査結果には限界がある」とするUSITCのブレット・ドイル委員長とジェイソン・カーンズ委員の見解を記載した(注3)。中国に対するPNTRの撤回により実質GDPがわずかに減少するとの試算は認めつつも、次の点を指摘した。
- 調査では、PNTR付与によって生じた損害が考慮されていない。PNTR付与は、中国が実施してきた他の政策と相まって、現在もなお米国の製造業にゆがみをもたらし、米国の経済的繁栄に影響を与え続けている。PNTR撤回、あるいはより的を絞った「外科的」な措置は、PNTR付与が引き起こした損害を食い止める一助となり得る。
- 本報告書に示されたPNTR撤回による経済全体へのコストは、基準年の2023年以降に生じた中国からの貿易の大幅な転換により、過大評価されている可能性が高い(注4)。
- 中国とのPNTR撤回による経済的便益の多くが十分に考慮されていない。これには、信頼性が高く、強靭(きょうじん)で安全なサプライチェーンの構築などが含まれる。
(注1)調査は1930年関税法332条に基づくもの。USITCには332条に基づき、米国と諸外国の産業間の競争条件を含め、関税や貿易に関するあらゆるテーマについて調査を行う権限が与えられている、ただし、USITCは調査結果に基づく勧告などは行わない。
(注2)現在はキューバ、北朝鮮、ロシア、ベラルーシの4カ国がコラム2に含まれる。
(注3)ドイル委員長はドナルド・トランプ大統領に指名され2026年7月に、カーンズ委員はバラク・オバマ大統領(当時)に指名され2018年4月(第1次トランプ政権下)に就任した。
(注4)2025年の米国の対中輸入額は、2023年と比較して27.8%(約1,189億ドル)減少している。米中間の貿易額については、2026年5月13日付地域・分析レポート参照。
(赤平大寿)
(米国、中国)
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