トランプ米政権が「国家安全保障科学技術戦略」を発表、優位性維持に向け通商措置の方針も示す

(米国)

ニューヨーク発

2026年08月24日

米国大統領府科学技術政策局(OSTP)は8月17日、「国家安全保障科学技術戦略(NSSTS)」を発表PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)した。

NSSTSは、米国の「国家安全保障戦略(NSS)」を支援し、それを実現するための経済安全保障、科学、研究、およびイノベーションに関する戦略を定めている。NSSTSの策定はバイデン前政権下の2022年8月に成立したCHIPSおよび科学法(CHIPSプラス法)の中で義務付けられており、OSTPはNSSが策定されるたびに、NSSTSをまとめることが求められている。今回発表されたNSSTSは2025年12月発表のNSSに基づく(2025年12月15日記事参照)。

NSSTSでは、米国の国家安全保障に関わる科学技術の優位性を維持するための施策を(1)技術・戦略的競争への注力(注1)、(2)技術的な強靭(きょうじん)性の構築、(3)イノベーションの加速、そして(4)国家安全保障のための科学技術の保護という「4つの柱」に分類し、それぞれに関連する通商措置などの取り組みや方針を示した。

このうち、2つ目の柱では、重要技術システムやサプライチェーンへの敵対国の関与を排除する方針を示した。その具体的手段として、連邦通信委員会(FCC)の「対象機器・サービス」リスト(注2)などの活用を挙げた。また、技術繁栄協定などの枠組みを通じ、これらの措置を同盟・パートナー国と連携して進めることで、共通の技術インフラやサプライチェーンの強靭化につなげるとした。

4つ目の柱では、一部の敵対勢力が、最先端技術や機微情報、知的財産の取得を目的として米国企業や資産に投資しているとし、これらに対処するため対米外国投資委員会(CFIUS)の機能を一層強化する方針を示した。特に2025年2月に発表した「米国第一の投資政策」に含まれていた、グリーンフィールド投資に対するCFIUSの権限を強化する方針をあらためて強調した(2025年2月25日記事参照、注3)。また、同盟・パートナー国による対内投資審査メカニズムの導入・改善を支援する方針も示した。

また4つ目の柱に関連する取り組みとして、輸出管理の合理化にも言及した。トランプ政権は新たなリスクや技術の進歩などに対応するべく、輸出管理の更新に取り組んでいると説明した一方で、時代遅れの規制を撤廃または合理化し、規則が意図せず米国企業のイノベーションや競争力を阻害しないよう取り組む方針を示した。規制合理化の例として、商務省産業安全保障局(BIS)が2026年1月、同盟・パートナー国を対象に、ドローンの輸出管理を緩和したことを挙げた。通商専門誌の「インサイドUSトレード」(8月19日)は、NSSTSの方針はトランプ政権のこれまでの輸出管理の緩和措置に整合すると指摘した。その具体例として、バイデン前政権下で定められた人工知能(AI)向け半導体の輸出管理強化に関する暫定最終規則(IFR)の見直しを挙げた(2025年5月13日記事参照)。

このほか、NSSTSの報告書では重要・新興技術(CET)のリストが更新され、付属書Aとして掲載されている。更新は2024年2月以来で、「再生可能エネルギーの生成・貯蔵」などの分野の削除や複数分野の統合などにより、分野の総数は18から14に縮小した。

(注1)戦闘地域での優位性維持や米国本土に対する脅威への対抗に必要な技術分野を特定し、それらを強化することや、パートナー国と協力して米国の競争力を促進する規範や標準を形成することなどが含まれている。

(注2)「2019年安全で信頼できる通信ネットワーク法」に基づきFCCがまとめている、米国の国家安全保障、または米国民の安全・安心に容認できないリスクをもたらすと判断された通信機器およびサービスの一覧。同リストに掲載されている品目は、米国内での輸入・販売・販売促進のために必要なFCC認証の取得が禁止される。

(注3)CFIUSの権限は、第1次トランプ政権下の2018年に成立した「外国投資リスク審査現代化法(FIRRMA)」に基づき、重要技術、重要インフラ、機微な個人情報を扱う米国事業への投資は非支配的な投資でも審査対象とするなど、強化された(2023年10月2日付地域・分析レポート参照)。だが、不動産取引などを除き(2024年11月5日記事参照)、グリーンフィールド投資に対しては、原則として審査の対象外となっている。

(滝本慎一郎)

(米国)

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