欧州産業界、欧州委のEU ETS改正案に強い懸念を示す
(EU)
ブリュッセル発
2026年08月04日
欧州委員会が7月17日に発表したEU排出量取引制度(EU ETS)の改正案(2026年7月29日記事参照)に対し、産業界からは厳しい声が相次いだ(注)。ビジネスヨーロッパ(欧州産業連盟)
は、温室効果ガス(GHG)の年間削減率の引き下げや無償排出枠の段階的廃止ペースの緩和を評価した一方、2031年以降の無償排出枠の付与条件については、手続きの複雑化や、2036年以降のEU域外のカーボンクレジットの取り扱いが不明瞭などと指摘した。
エネルギー集約型産業の業界団体は、改正案が国際競争の激化やEU企業の収益性・投資余力の低下といった現状を十分に考慮していないと批判した。欧州鉄鋼連盟(EUROFER)
は、脱炭素化に不可欠な低価格の電力や水素の安定供給の見通しが不透明な中で投資判断を迫られることへの懸念を示した。また、無償排出枠の付与を投資実施の条件とする仕組みについても、法的確実性、特に企業の経営判断の自由度の観点から問題があると指摘した。欧州化学工業連盟(Cefic)
も同様に、エネルギーインフラ整備など投資環境の整備を訴えたほか、短期・中期的な炭素価格の高騰による負担を軽減するための追加的な支援が必要と述べた。
欧州最大の航空業界団体のエアラインズ・フォー・ヨーロッパ(A4E)
と欧州船主協会(ECSA)
は6月22日付の共同声明
で、持続可能な燃料の価格は従来型燃料と比べて、海運で約4倍、航空で3~6倍に達すると指摘した。こうした価格差を縮小するには、供給拡大が不可欠だが、生産関連投資の約74%がアジアに集中しており、欧州の割合は約10%にとどまるとして、ETS収入を同分野に優先的に投入するよう訴えた。
欧州風力協会(ウインド・ヨーロッパ)
は無償排出枠の廃止ペースの緩和について、産業の電化への投資が遅滞すると懸念を示した。また、ETS収入の使途に関し、欧州委の電化行動計画(2026年7月22日記事参照)と連動させ、今後のEU理事会(閣僚理事会)および欧州議会の審議過程で、産業の電化分野にも活用可能とするよう要請した。
(注)各団体の声明は全て7月17日付。
(滝澤祥子)
(EU)
ビジネス短信 4e1d780b7c2ff188





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