スペインでフィンランド製大型水素エンジン使用の系統接続実証、再エネ拡大で調整電源としても注目
(スペイン、フィンランド)
マドリード発
2026年07月03日
フィンランドの舶用・エネルギー機器大手バルチラ(Wärtsilä)は6月11日、スペイン北部バスク州の自社研究開発施設で、100%水素を燃料とするフィンランド製大型エンジンの実証運転を開始したと発表
した。同社によれば、大型発電用途の水素燃料エンジンが実際の電力系統に接続するのは世界初。なお、商用発電所ではなく、メガワット(MW)級の定置型発電設備を公共配電網に連系した実証となっている。
特徴は、燃料電池やコンバインドサイクル・ガスタービン(CCGT)(注1)ではなく、舶用エンジンに近いピストン式のレシプロエンジン(注2)で水素を燃焼させ、発電機を回す専焼方式であることだ。発電効率そのものは最新のCCGTに及ばないが、短時間起動や柔軟な出力調整を強みとする。同社はこれを、風力や太陽光発電などの再生可能エネルギー(再エネ)比率の高い電力システムを支える調整電源の実証と位置付けている。
スペインでは、2025年の再エネ発電量が過去最高の約151テラワット時(TWh)に達し、総発電量の55.5%を占めた。太陽光や風力発電の出力が落ちる時間帯や需要急増時に、必要な分だけ素早く発電する機動的な調整電源の重要性は増している。水素価格や供給インフラなど課題は残るが、グリーン水素を燃料に使えば、燃焼による二酸化炭素(CO2)排出を防ぐことができる。将来的には、データセンターや産業施設向けの低炭素電源および電力系統に接続しないオフグリッド電源としても展開余地があるとみられる。
コージェネレーション設備の更新入札に水素対応要件
同実証は、水素を電解槽で「作る」だけでなく、発電燃料として「使う」段階を示す点でも注目されるが、こうした水素利用の拡大を後押しする政策も導入されつつある。
政府は6月23日に閣議承認した産業向け高効率コージェネレーション(熱電併給)設備の更新入札に、水素対応要件を盛り込んだ。2026~2027年に計1,200MWを対象とし、天然ガスまたはバイオマスを用いる設備を対象に特定報酬制度(注3)を付与し、天然ガス設備には少なくとも10%の再生可能水素を利用できる仕様を求める。
コージェネレーション設備は工場などで熱と電力を同時供給するもので、系統向け発電とは性質が異なるが、再エネ比率が高まる中、電気を使う場所で発電する高効率・分散型電源として期待される。現在、EUの再エネ指令改正法の国内法化に向けた動きが途上で、水素需要創出策が依然として限られる中、政府が水素の利用先となる設備を先行整備する動きといえる。
(注1)ガスタービンと蒸気タービンを組み合わせた二重の発電方式。
(注2)シリンダー内でのピストンの往復運動を回転運動に変換するエンジン。
(注3)市場価格に基づく電力販売収入に加え、特定報酬を事業者が受け取ることができる制度。特定報酬は、設備類型ごとに回収できない投資コストが存在する場合に補填(ほてん)される投資報酬および、運転・維持費用が収入を上回る場合に支払われる運転報酬で構成される。
(伊藤裕規子)
(スペイン、フィンランド)
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