エブラル経済相、USMCA見直しで北米域内生産強化を主張

(メキシコ、米国、カナダ)

メキシコ発

2026年07月06日

メキシコのマルセロ・エブラル経済相は7月2日の早朝記者会見で、前日にオンラインで開催された米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の共同見直し(2026年7月2日記事参照)に関する協議結果を報告した。メキシコとカナダはUSMCAの延長を提案したが、米国は対メキシコ・対カナダ貿易赤字や是正すべき課題への懸念を理由に、16年間の延長には反対したという。ただ、同相は「不確実性を軽減する第一の要因は、USMCAが引き続き有効であることだ」と強調し、協定は年次見直しに移行するものの、現行の枠組みが維持されることを繰り返し訴えた(注1)。

同相は今回の見直し協議について「米国が貿易を行う全ての国の中で、メキシコが最も有利な立場になることが目標だ」と述べた。さらに、米国側は製造業雇用の喪失やメキシコ・カナダとの貿易赤字を問題視しているとし、その解決には「域外依存を減らし、北米域内の生産拡大が不可欠だ」と主張した。

具体例として、ペニシリンなどの医薬品原料や主要原薬(API)、半導体の多くを輸入に依存している現状を挙げた。同相は、メキシコでは既に82種類のAPIを生産していると説明し、今後は医薬品の重要中間体(KSM、注2)やAPIの国内生産を拡大する方針を示した。また、半導体メーカーやデータセンター関連機器メーカーの誘致を進める考えを明らかにした。

一方、自動車産業については、米国の1962年通商拡大法232条に基づく追加関税(注3)への対応を説明した。同相は、「メキシコの自動車産業に対して世界の他の国々より厳しい条件を課すことは許されない」と述べ、これまでの交渉により、自動車部品への関税免除や完成車に対する負担軽減措置を維持している(注4)と強調した。さらに、7月20日に予定される米墨協議では海外依存度の低減や原産地規則、今後の協議スケジュールが主要議題になるとした。原産地規則については、自動車部品で合意に至っていないことを認めた。さらに、完成車に求められる75%の域内原産割合(RVC)については、「これはわずか6年前に合意されたもので、非常に厳しい基準だ」と米国側に伝えたと説明した。その一方で、関税上の優遇措置を維持するためには、「北米域内の原産比率を高める必要がある」との認識も示した。ただし、生産現場への影響を考慮し、「企業に新たなコストや困難を与えないよう慎重に検討する」と述べている。

さらに、同相は米国との協議に向け、「米国がUSMCAに関して懸念しているリストを全て送ってほしい」と求め、「メキシコの憲法と国益の範囲内で解決に努める」とした。カナダとの関係については、両国間に争点や懸念事項はないことを強調。また、中国を含む新たな自由貿易協定(FTA)の締結可能性については、「現時点で新たな協定を予定していない」と明言し、「最大の市場である米国における立場を守ることが当面の課題だ」と述べた。

(注1)延長に合意できなかった場合、その後も毎年見直しが継続され、合意に至った時点から16年間延長される。最終的に合意に至らない場合、USMCAは条文に従い2036年に失効する。

(注2)KSM(Key Starting Material:重要中間体)は、原薬(API)を合成するためのカギとなる出発原料となる物質。

(注3)1962年通商拡大法232条に基づき、完成車や鉄鋼・アルミニウムなどに対して25~50%の追加関税が賦課されており、これはUSMCA原産品でも免除されない。詳細は特集「米国関税措置への対応」を参照。

(注4)自動車完成車および中・大型トラック・バスについては、USMCA原産品で、かつ、米国商務省の承認を得たモデルは、非米国産部分に対してのみ1962年通商拡大法232条に基づく追加関税が賦課される。

(阿部眞弘)

(メキシコ、米国、カナダ)

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