欧州委、メタン規制とエネルギー安全保障の両立へ、罰則適用猶予など勧告公表

(EU、中東)

ブリュッセル発

2026年07月30日

欧州委員会は7月20日、エネルギー部門から排出されるメタンガス削減に関する規則(2023年11月21日記事参照)の実施とエネルギー安全保障の両立を目的に、加盟国および事業者向けの2つの勧告を公表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。

同規則はEU域内の石油・天然ガス・石炭事業者に対し、メタン排出の計測・報告や削減措置の実施を義務付けるもので、2024年に施行された。EUは石油、ガス、石炭の多くを輸入に依存しているため、輸入される化石燃料についても段階的に要件を導入しており、2027年からはEU域内の輸入事業者に対し、輸入する化石燃料のメタン排出に関する監視・報告・検証(MRV)義務を課す。また、加盟国は非順守に対する罰則制度を整備することが求められている。

こうした中、中東情勢を背景としたエネルギー価格の高騰(2026年4月17日記事参照)や供給不安への懸念が高まる中で、産業界や加盟国からは規則の運用がエネルギー供給に与える影響を懸念する声が上がっていた。また多くの加盟国で罰則制度が整備されておらず、現地報道によると、整備済みの加盟国は3カ国にとどまる。

これを受け、欧州委は加盟国に対し、輸入事業者による2027~2029年の義務違反については、不正行為が認められる場合を除き、規則で定める罰則を適用しないよう勧告外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。一方で、加盟国には事業者の順守状況を継続的に監視し、規則への適合を促すことを求めた。欧州委は、メタン排出削減という規制の目的を維持しつつ、エネルギーの安定供給を確保するための措置としている。

なお、EUは米国との関税合意において、2028年までの3年間で総額7,500億ドル相当のエネルギーを米国から購入する方針を示している(2025年8月25日記事参照)。今回の勧告は同合意に直接関係するものではないものの、化石燃料の輸入に関する規制運用の予見可能性を高めることで、EUのエネルギー安全保障強化や米国産天然ガスなどの安定調達を後押しする側面もあるとみられる。

また、輸入事業者による規制適合の証明方法を明確化する勧告外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますも公表した。付属書に定める任意のモデル条項の活用を促すとともに、生産者と輸入事業者との間の直接的または間接的な関係を立証することが困難または不可能な場合、(1)サプライチェーン上で排出情報をひも付ける「Trace and Claim」、(2)認証制度(Certification)の活用を、規制への適合性を証明する手段として認めるよう加盟国に勧告した。これにより、事業者は特定のガス分子や個別貨物を物理的に追跡することなく、規制への適合性を証明することが可能となる。

(薮中愛子)

(EU、中東)

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