旧法体系下の自家発電事業者に対する託送料金の新算定方式を公示
(メキシコ)
調査部米州課
2026年06月22日
メキシコの国家エネルギー委員会(CNE)は2026年6月18日、1992年の電力公共サービス法(LSPEE)に基づく許認可を得て、系統接続契約および送電サービス契約を締結している発電事業者に対し、電力庁(CFE)が請求する送配電利用料金(託送料金)の新算定方式を定める細則を官報公示した。同細則は、同日付官報で公示された旧法体系下から現行電力部門法(LSE)体系下への許認可の移行指針(2026年6月19日記事参照)と対をなし、旧来の自家発電事業を新法体系下に移行する過程で適用される託送料金の算定方式となる(細則1.1、1.2、2.1.VII)。
新方式の最大の特徴は、旧来の「郵便切手方式」(注1)のような一律料金体系ではなく、国家電力管理センター(CENACE)が管理する市場価格を基に料金を算定する点にある。具体的には、(1)送電サービス、(2)配電サービス、(3)CENACEの電力卸売市場(MEM)運営サービス、(4)MEMに含まれない補助サービス(SCnMEM)の価格を合算し、発電事業者ごとの請求額を決める仕組みとした(2.1.I、3.1、3.2)。旧来の託送料は、再生可能エネルギーの普及促進を企図した政策的インセンティブを内包する特例的料金であったため、新方式では負担が大きく引き上げられるとみられる。ただし、再エネまたは高効率コジェネレーションを用いた自家発電については、MEMの現行ルールが改定されるまでは、補償電力量を反映したかたちで託送料金を算定する特則(注2)を置いた(付則第5条)。
適用対象は、あくまでLSPEE体系下で許認可を取得し、系統接続契約と送電サービス契約を締結した事業者に限られる(1.1、1.2、2.1.VII)。CFEは各事業者への請求額を毎月算定・請求し、CNEに報告する(3.3、3.4)。施行日は2026年10月19日で、それ以降は旧方式に基づく行政文書は原則として失効し、既存契約書などで旧料金算定方式を引用している場合も、新方式を引用したものとみなされる(付則第1条、第2条)。
他方、許認可の新法体系下への移行指針との関係で、重要な経過措置が設けられた。2028年10月6日以降まで有効な系統接続・送電契約を持ち、かつ新法体系下への移行手続きを開始した事業者については、2026年10月19日~2028年10月6日まで新方式は適用されず、引き続き旧方式に基づき支払うことができる(付則第3条)。一方で、移行手続きを完了できなかった場合や、MEMにおける発電所の資産登録が完了した場合、またはMEMで運転を開始した場合にはこの猶予は終了し、直後の料金請求時から新方式に基づく託送料金、またはLSE体系下で本来適用される料金体系へ切り替わる(付則第4条、注3)。
新料金の適用が訴訟を招く可能性も
今回の新料金適用には、法的安定性の欠如を指摘する声がある。自家発電許認可のLSE体系下への移行は任意であるにもかかわらず、移行しない選択をし、旧法体系下で締結した有効な契約が存在しても、2026年10月19日以降は旧来の料金が適用されないからだ。そのため、継続的契約関係の不利益変更の問題としてアンパロ訴訟(注4)を招く可能性がある。
(注1)電気を送る距離(送電距離)やルートに関係なく、一律の託送料金を適用する制度。
(注2)自家発電事業者が需要量以上に発電し、系統に余剰注入した電力(補償電力)を託送量から相殺するかたちで料金を算定する措置。
(注3)付則第3条の適用条件は新法体系下の許認可への移行であるため、移行が完了しなかった場合は旧来の託送料金は適用できず、移行手続きが当局により否認、または申請者が期限を守れずに「みなし辞退」となった時点で今回の細則に基づく新料金が適用される。他方、移行が完了した後は、発電事業者と需要家は第三者の扱いとなるため、「託送料」という概念ではなく、発電事業者側の系統注入料金と需要家側の引き取り料金が送配電料金として課金されることになる。
(注4)行政府や立法府、司法府などの行為により、憲法が保障する国民や企業の基本的権利が侵害された場合、当該行為の差し止めと無効を求める裁判制度。原則として、提訴した企業に対してのみ差し止めや無効の効果が及ぶ。
(中畑貴雄)
(メキシコ)
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