旧法に基づく自家発電許認可の新法体系化に移行する指針を公布

(メキシコ)

調査部米州課

2026年06月19日

メキシコ・エネルギー省(SENER)は2026年6月18日、1992年の電力公共サービス法(LSPEE)に基づき自家発電、またはコジェネレーションの許認可を得ている事業者が、2025年3月に新たに発効した電力部門法(LSE)の枠組みに基づく許認可に移行するための指針を官報で公布した。同指針は、既存の許可・契約・需要設備を対象に、LSE上の自家発電事業や電力卸市場(MEM)向け発電事業へ迅速に移行するための特別制度を定めるもの(第1条、第2条)。移行は2026年6月19日から2028年10月6日までの期間限定で実施される(第3条XVII)。ただし、移行は義務ではなく、従来制度に基づく許可や契約は、移行を選択しない場合でも有効期間満了まで存続する(LSE付則第5条)。

移行対象はLSPEEに基づく自家発・コジェネの有効許可および関連契約など(第3条IX)であり、移行先は、(1)系統接続なし自家発電、(2)系統接続あり自家発電、(3)MEM向け発電の3類型(第14条)。旧自家発電事業の出資者兼オフテイカーは、電力庁(CFE)から基礎供給(Suministro Básico、注1)を受けるか、または有資格需要者(Usuario Calificado)として有資格供給事業者(Suministrador Calificado、注2)から供給を受けるかを選択できる(第13条)。

手続き面では、「移行窓口(Ventanilla de Migraciones)」が唯一の申請手段とされ、関心登録から申請、審査、許可付与、契約更新、運転開始までを一括処理する(第22条、第17条)。関係機関は原則として追加情報や追加手続き、料金を要求してはならず(第5条II)、既存の系統接続契約を有する場合には追加の系統検討や補強工事、費用負担も不要とされる(第5条III)。さらに、移行手続き中も既存契約に基づき操業継続が認められる(第4条)。新たな許認可は旧許認可の残存期間を基準とし、運転中の設備の場合は近代化計画を条件に最長15年延長(残存期間と合わせて30年が上限)、未運転設備では25年が上限とされている(第5条IV)。

移行は全面的かつ不可逆的であり、新法に基づく許可が付与されると旧制度の許可・契約は終了し、権利も放棄される(第12条)。同一発電所に複数の旧許可がある場合は全容量を1つの新許可に統合する必要があり(同条)、部分的移行は認められない。また、移行に際して発電容量の増加は認められず、発電技術の変更も原則として制限される(第6条)。

事業者が対応すべき実務上の論点としては、計量設備の機能要件(第5条VI、第44条、第45条)、MEM参加に必要な要件(第5条VII、第43条)、最低限の運転試験(第5条IX)、および既設設備に対する近代化計画の提出(第5条IV、第25条I)などが挙げられる。

旧法上の権利放棄、厳格な手続き管理への対応が必要

今回の指針は、旧制度下の電力事業を新制度に組み込むための実務的な移行ルートを提示するもの。事業者にとっては規制不確実性の低減と引き換えに、旧法体系上で認められていた権利(注3)を放棄する必要がある。さらに、移行プロセスの厳格な期限管理(注4)に加え、技術・契約面の要件を段階ごとに確実に履行する対応が求められる。

(注1)家庭向けや電力需要が1メガワット(MW)に満たない事業所に対する電力供給事業。基礎供給は基礎供給事業者(Suministrador de Servicio Básico)としてCFEが担う。

(注2)電力需要が1MWを超える事業所(有資格需要者)に対しては、CFE以外の民間事業者も有資格供給事業者(Suministrador de Servicio Calificado)として電力を供給できる。1MWを超える事業所は有資格事業者としての登録を行うことで、電力供給事業者を自ら選択できるようになる。

(注3)例えば、旧法体系下では再生可能エネルギーによる発電を条件に、通常料金よりも安い託送料金が設定されていた。

(注4)移行プロセスでは、関心表明 → 申請 → 補正 → 許可 → 技術対応 → 契約締結 → 市場(MEM)参加という各段階が順番と期限付きで進行するが、期限を過ぎると、その時点で手続き終了(みなし辞退)と判断される(第32条)。

(中畑貴雄)

(メキシコ)

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