中東の石油輸出国、中東情勢悪化で成長減速の見通し、サウジアラビアは影響限定的、世界銀行報告

(中東、イラン、イラク、湾岸協力会議(GCC)、クウェート、カタール、オマーン、サウジアラビア)

調査部中東アフリカ課

2026年06月16日

世界銀行は6月11日、「世界経済見通し(2026年6月)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」を発表し、中東情勢の悪化によるエネルギー価格の高騰などを背景に、2026年の世界の経済成長率が2.5%に減速すると報告した(2026年6月16日記事参照)。2026年の中東・北アフリカ(MENA)、アフガニスタンおよびパキスタン地域の成長率予測(注1)は1.6%と、2026年1月時点の予測から2.7ポイント下方修正された。世銀は中東情勢の混乱が2026年内に収束すれば、2027年から2028年にかけて同地域の成長率は平均4.5%まで回復を見込むものの、依然として不確実性は大きいとした。

中東情勢の悪化は同地域の経済に深刻な影響を及ぼしており、人道的損失に加え、エネルギー・食料価格の上昇や輸送コストの増加を通じてインフレ圧力が高まり、経済活動の低迷が広がっている。

特に石油の輸出国で影響が顕著である。イランでは経済制裁の強化や社会不安の高まりを背景に低迷していた経済がさらに悪化した。また、イラクや湾岸協力会議(GCC)諸国ではホルムズ海峡を通過する船舶の制限やエネルギー関連インフラの毀損(きそん)により、石油・天然ガスの生産や輸出に混乱が生じている。加えて、厳しい財政状況の影響もあり、一部では非石油部門の活動も低迷しているという。

今後の見通しでは、中東の石油輸出国(注2)の成長率が2026年に0.3%まで低下する予測で、2026年1月時点から4.3ポイント下方修正された。原油・天然ガスの生産減少に加え、貿易や対内直接投資、観光・航空などサービス分野の停滞が影響するとした。食料の輸入価格や輸送コストの上昇を背景にインフレの加速が見込まれるほか、エネルギー価格の上昇が収入増加の要因となる一方、防衛支出の拡大などから、その財政効果には不確実性が伴うと指摘した。

国別では、イラクやクウェート、カタールで資源収入の減少や防衛支出の増加により財政・経常収支の悪化が見込まれる。一方、オマーンでは主要港がホルムズ海峡の外側に位置しているため、同海峡の通航制限や海運混乱の影響を相対的に受けにくく、経済減速は比較的緩やかなものにとどまると予測。サウジアラビアについても、東西パイプライン(注3)を通じて紅海側の港湾へ原油輸出を迂回させることが可能であることから、輸送制約の影響を一定程度回避でき、成長の下振れは他の産油国に比べ限定的と予測している。

なお、中東の石油輸入国・地域(注4)では、炭化水素価格の上昇や輸送・観光の混乱、海外送金の減少の影響を受け、2026年の成長は減速する見込みと報告されている。

(注1)イラン、レバノン、シリア、イエメンは不確実性が高いため除外。2026年1月版との比較値はイランを除外して再計算されている。

(注2)アルジェリア、バーレーン、イラク、クウェート、リビア、オマーン、カタール、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)。

(注3)サウジアラビア東部州アブカイクおよびガワールに存在する大規模石油コンビナートから、西部ヤンブー工業団地へのエネルギー供給、および紅海側からの原油輸出を目的として建設された、東西に横断する全長約1,200キロメートルの石油パイプライン。同パイプラインは、1975年から1980年までの開発5カ年計画に基づき整備が進められ、1981年に完成した。

(注4)アフガニスタン、ジブチ、エジプト、ヨルダン、モロッコ、パキスタン、チュニジア、ヨルダン川西岸地区とガザ地区。

(加藤皓人)

(中東、イラン、イラク、湾岸協力会議(GCC)、クウェート、カタール、オマーン、サウジアラビア)

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