欧州委、中東情勢を受けEUの2026年GDP成長率予測を1.1%に下方修正

(EU、ユーロ圏、中東)

ブリュッセル発

2026年06月03日

欧州委員会は5月21日、春季経済予測を発表(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)し、2026年の実質GDP成長率は、EU27カ国で1.1%、ユーロ圏21カ国では0.9%と予測した。前回の2025年秋季経済予測(2025年11月27日記事参照)から、EUとユーロ圏ともに0.3ポイント下方修正した(添付資料表1、2参照)。2月末までは、インフレ率の低下を背景にEU経済は緩やかな拡大を維持するとの見通しだったが、中東情勢に伴う新たなエネルギー危機が、インフレの再燃と景況感悪化につながると説明した。2027年の成長率予測は、EUは1.4%、ユーロ圏は1.2%とした。

エネルギーを輸入に依存するEUは、中東情勢の影響を受けやすい。しかしロシアによるウクライナ侵攻後に進めた供給の多角化、脱炭素化、エネルギー消費の削減により、ショックを吸収する力は高まっており、成長は減速するものの持続するとした。インフレや雇用悪化への懸念がある一方、個人消費が下支えし、エネルギー価格は、混乱前から約2割上回る水準から徐々に低下し、EUのインフレ率は2026年に3.1%でピーク後、2027年には2.4%に低下する見通し。雇用は2026年に鈍化後、2027年に再度拡大し、失業率は改善傾向が一服し、6.0%前後で安定するとした(添付資料表1、3参照)。

2026年のEU加盟国別のGDP成長率は、アイルランド(マイナス1.2%)を除き、プラス成長を予測。ユーロ圏主要国では、スペイン(2.4%)、フランス(0.8%)、ドイツ(0.6%)、イタリア(0.5%)とばらつきがみられた(添付資料表2参照)。

今後の下振れリスクは、中東情勢の長期化と世界のエネルギー市場への影響であるとし、不確実性の高まりと供給正常化の遅れを踏まえ、供給混乱が長期化する代替シナリオを示した。同シナリオでは、エネルギー価格は一段と上昇し、2026年後半にピークを迎えた後、2027年末にかけて低下するも、インフレは緩和せず2027年の景気回復は見込めない。消費、投資の下振れに加え、石油精製品やヘリウム、肥料などで供給不足が深刻化し、世界の供給網や食料価格に波及する可能性があるとした。また、貿易政策の不確実性や地政学的な緊張、貿易関係の変化もリスク要因に挙げた。

上振れ要因としては、長年の成長制約に対応する構造改革の加速や、防衛、エネルギー転換分野への公共投資の拡大を挙げた。また、人工知能(AI)は機会とリスクの双方を有するとし、生産性向上が投資を下支えする一方、労働市場の混乱が需要の足かせとなる可能性を指摘した。

(大中登紀子)

(EU、ユーロ圏、中東)

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