「トランプ・ルート」開発のためアルメニアと米国が枠組み協定を締結

(アルメニア、米国)

調査部欧州課

2026年06月10日

アルメニア外務省は6月4日、米国政府と「国際平和・繁栄のためのトランプ・ルート(TRIPP)」に関する戦略的協力枠組み協定を締結したと発表した。TRIPPは、アルメニア領内を通り、アゼルバイジャン本土と同国の飛び地となるナヒチェバン自治共和国を結ぶ「ザンゲズル回廊」を指す。アルメニアと米国が合弁企業を設立し、TRIPP整備に取り組む。アルメニア外務省は、同国および周辺地域の平和と繁栄を実現するための重要な一歩になると締結を歓迎した。

TRIPPの開発については、2025年8月に米国でドナルド・トランプ大統領立ち会いの下で発表された、アルメニアとアゼルバイジャン間の和平実現に向けた共同宣言の中に盛り込まれた(2025年8月13日記事参照)。今回締結された協定では、TRIPP開発の趣旨や基本的な原則に加え、両国によって設立される実施主体の位置づけや役割が規定された。

協定ではTRIPP開発の趣旨として、a. TRIPPが地域の平和、安定、繁栄、統合に寄与すること、b. アルメニアと米国にとって新たな市場を開拓する貿易ルートを創出すること、c. TRIPPの開発や運用を通じてアルメニア企業に経済的利益をもたらすことが挙げられた。アルメニアが自国領域内のすべてのTRIPP関連区域に対する完全な主権、領土保全および管轄権を保持していることも確認された。

協定によると、TRIPP開発の主体として、アルメニアと米国の合弁でTRIPP開発会社(TDC)が設立される。同社の持ち分は、米国側が国際開発金融公社(DFC)を通じて74%、アルメニア側が26%を保有する。TDCの設置期間は49年。さらに50年の延長が可能で、その際にはアルメニア側の持ち分が49%に引き上げられる。

アルメニア政府は開発に必要な法整備を行うとともに、TDCに対して許認可やTRIPP実施区域内の土地の独占的利用と開発権を付与する。

TDCの子会社として、鉄道、道路、石油ガスパイプライン、通信、電力など分野ごとに特別目的会社(SPV)が設立され、実際の開発を担う。外部の請負業者の選定はTDCが行う権限を有する。

本協定内容については、米国のマルコ・ルビオ国務長官が5月26日にアルメニアの首都エレバンを訪問した際に合意に至った。協定の署名は6月1日に米国側、6月4日にアルメニア側でそれぞれ行われた。

ニコル・パシニャン首相は2025年11月12日の議会での演説の中で、「2026年前半に全ての事項について合意し、後半に建設を始めなければならない」と述べていた。アゼルバイジャンも開通に期待を寄せる。イルハム・アリエフ大統領は同年10月、TRIPPにつながる同国内のホラディズ~アグベンド間の鉄道建設を2026年内に完了させると述べ、TRIPPが2028年末までに開通する可能性にも言及した(「カスピアン・ニュース」2025年11月14日)。

(浅元薫哉)

(アルメニア、米国)

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