米議会で移民関連予算が成立、国土安全保障省へ700億ドル割り当て
(米国)
ニューヨーク発
2026年06月15日
米国のドナルド・トランプ大統領は6月10日、国土安全保障省(DHS)の2029会計年度(2028年10月~2029年9月)までの移民対策関連予算を賄う「セキュア・アメリカ法
」案に署名し、同法は成立した。同法は、移民取り締まりや関連活動に総額約700億ドルを割り当てる。具体的には、DHS傘下の移民・関税執行局(ICE)に385億ドル、米国税関・国境警備局(CBP)に260億ドルを割り当てるとともに、マークウェイン・マリンDHS長官の裁量で50億ドルを配分できる。
法案の採決は下院(6月9日)で賛成214、反対212、上院(6月5日)で賛成52、反対47だった。上院では、共和党主導で財政調整措置(注1)を経て審議を進め、通常必要な60票ではなく単純過半数で可決した。投票はおおむね党派に沿ったものとなり、共和党が賛成、民主党が反対した。ただし、共和党のリサ・マコウスキー上院議員(アラスカ州)は、1年ではなく3年間の予算を財政調整措置で可決することは、移民政策に対する議会の監視機能を弱めるとして反対した。
民主党は、1月にミネソタ州ミネアポリスで起きたICEとCBPの捜査官らによる米国市民2人の射殺事件に反発するなど、DHSを巡る予算審議はこれまで難航していた。DHSは4月末に運輸保安局(TSA)などの予算が成立するまで76日間にわたり閉鎖状態となった。ただ、ICEなどは予算から除外されていた。
同法は、地元警察がICEと連携して移民法を執行する移民国籍法(INA)第287(g)条に基づく協定(注2)に参加していない管轄区域を対象としたICEの活動に3億5,000万ドルを割り当てた。多くの場合、この協定を拒否する管轄区域は、「聖域都市(サンクチュアリ・シティー、注3)」だ。トランプ政権は、聖域都市に対して厳しい姿勢を見せており(2025年7月2日記事参照)、マリン長官は、聖域都市の空港における税関業務の有効性を疑問視していた(「フォックス・ニュース」4月6日)。司法省が2025年8月に公表した聖域都市のリスト
に含まれる地域には18の空港がある。同長官は、これら聖域都市の空港からCBPの職員を撤退させることを示唆しており、これが実行されれば旅行や貿易などで数百億規模ドルの損失が生じると懸念されている(「ニューヨーク・タイムズ」紙電子版5月31日)。一方、ショーン・ダフィー運輸長官は5月の議会公聴会で、この案に反対し、「われわれの政治方針に同意しない州で航空便を停止すべきではない」と述べた。
なお、今回成立した予算案には当初、トランプ氏によるホワイトハウス宴会場建設計画に関わる10億ドルの資金および、政治的迫害の被害者であると主張するトランプ氏の支持者への補償金として18億ドルの資金が盛り込まれていたが、これらの項目は審議の過程で最終的に削除された。
(注1)債務上限や歳出などの予算関連法案について、フィリバスター(議事妨害)を回避し、単純過半数の賛成で可決できる立法手続き。
(注2)ICEは、287(g)条プログラムに基づいて、1,900以上の管轄区域当局と協力協定(MOA)を結んでいる(6月12日時点)。
(注3)連邦移民当局との協力を制限している自治体。ニューヨーク、ロサンゼルスなどの大都市が多い。
(大垣ジャスミン)
(米国)
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