中国上海汽車集団、スペインでMG車生産へ、相殺関税や「域内産」要件対応も視野

(スペイン、中国)

マドリード発

2026年06月22日

中国上海汽車集団(SAIC)傘下のMGは6月2日、欧州大陸初(注)となる製造拠点をスペイン北西部ガリシア州に設置する計画を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。初期投資額は約2億ユーロ。2027年着工、2028年稼働を予定し、年産能力は最大12万台を見込む。同拠点を研究開発、先進製造、主要部品供給、スマート物流を統合する産業エコシステムと位置付ける。

ガリシア州政府によると、フェロル外港に製造拠点を建設、近郊アス・ポンテスの産業・物流拠点を整備し、雇用は直接・間接で2,300人規模を見込む。選定の背景には、ステランティスのビゴ工場を中心とする自動車産業基盤、部品供給網、生産・物流人材、港湾インフラがある。スペイン市場においてMGの存在感は高い。2026年1~5月の乗用車販売シェアは3.9%で、ブランド別で上位10位だ。

州政府は本件を戦略的産業プロジェクトに指定し、許認可を迅速化する。ただし、投資確定には非EU企業として中央政府の対内直接投資認可が必要となる。

スペイン既存産業基盤を取り込む中国メーカー

EUの対中バッテリー式電気自動車(BEV)相殺関税や欧州内価値創出を重視する産業政策を背景に、中国系自動車・電池メーカーは欧州域内生産への移行を急ぐ。スペインでは、中国ブランドの現地生産化や、充実した自動車産業基盤や港湾インフラ、比較的低い生産コスト、政府の積極的な誘致姿勢から、関連投資が相次ぐ。EV製造の零跑汽車(リープモーター)はステランティスとの合弁を通じ、サラゴサとマドリードに持つ既存工場の活用を検討する。寧徳時代新能源科技(CATL)はステランティスとサラゴサで最大41億ユーロを投じるリン酸鉄リチウムイオン(LFP)電池工場を建設し、2026年末の生産開始を目指す。奇瑞汽車(チェリー)も現地系EVモーターズ傘下のエブロとの提携により、旧日産バルセロナ工場で2026年秋に試験生産を予定する。

ただし、欧州内で最終組み立てを行うだけで、EUやスペインの支援制度上、直ちに「欧州製」として優遇されるわけではない。EUでは産業加速法案(IAA)や「域内産(Made in EU)」要件の明確化(2026年3月13日記事参照)を通じ、電池、主要部品、研究開発、サプライチェーンを含む域内価値創出が問われ始めている。スペインも2026年の新たな電動車購入支援「Auto+」で「電動・低価格・欧州製」を加算要件に掲げ、この流れを先取りする動きを見せている。

(注)MGは英国発祥のブランドで、SAICによる買収後も英国で車両組み立てが行われていたが、2016年に終了。現在の欧州市場向け供給は中国生産に依存している。

(伊藤裕規子)

(スペイン、中国)

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