有害廃棄物管理計画に関する公式規格の草案を官報公示
(メキシコ)
調査部米州課
2026年06月11日
メキシコ環境天然資源省(SEMARNAT)は2026年6月9日、有害廃棄物管理計画の作成・実施手続きを定めるメキシコ公式規格(NOM)の草案「PROY‑NOM‑160‑SEMARNAT‑2026」を官報公示し、60日間のパブリックコメント募集を開始した。本規格は草案段階にあり、企業や業界団体も意見提出が可能だ。
本規格の背景には、2026年1月に施行された循環経済一般法(LGEC)と、廃棄物の抑制および総合管理一般法(LGPGIR)の改正(2026年1月23日記事参照)がある。従来の適正処理重視から、資源循環や環境負荷低減、気候変動対策を含む包括的な管理への転換を目指す政策の一環として、共同責任やトレーサビリティの強化を柱としている。対象はLGPGIR上で「有害廃棄物」(注1)と定義される廃棄物であり、「一般廃棄物」(注2)や「特別管理廃棄物」(注3)は含まれない。
進出企業にとって特に重要なのは、規制対象となる事業所が広がっている点だ。大規模排出事業者に加え、製品が使用後に有害廃棄物となる場合の製造者、輸入者、販売者なども対象とする。このため、製造工程で有害廃棄物を排出する自動車、電機、化学産業など製造業に加え、輸入販売や流通を担う企業も対象になり得る。これらの企業は、必ずしもこれまで汚染物質排出・移転登録(RETC)制度に基づく年次操業報告書(COA、注4)を提出していない場合が多いが、本規格ではCOAの有無にかかわらず、対象製品を扱う場合には管理計画の作成・登録が求められる点に留意が必要だ。本規格では、廃棄物管理のトレーサビリティが重視され、廃棄物の発生から最終処分までの流れを把握し、マニフェスト、契約、廃棄物処理業者の許認可などを通じた責任の明確化が求められる。企業は単に外部委託を行うだけでなく、その適正処理を継続的に確認する体制整備が必要となる。
さらに、感染性廃棄物など医療・研究分野の廃棄物も明確に対象に含まれた点も重要だ。製造拠点に加え、研究施設や診療機能を有する拠点を含めたグループ横断的な対応が求められる可能性がある。
パブコメへの対応と適用に備えた準備を
本規格は、パブリックコメントの内容を考慮した確定版の官報公布日の180日後に適用される(注5)。既に草案作成の段階でメキシコ自動車工業会(AMIA)、全国化学産業協会(ANIQ)など多くの業界団体が関与しているため、同草案から大きな変更なく確定版が公布される可能性もある。本規格は製品使用後に有害廃棄物となる場合も考慮する必要があり、製造業者だけでなく、輸入業者や流通業者など対象となる事業所範囲が広い。そのため、対象廃棄物の特定、既存の管理体制の見直し、委託契約の精査に加え、COA提出対象外だった企業についても管理計画(注6)の策定準備を進めることが重要となる。
(注1)「有害廃棄物(Residuos Peligrosos)」は、毒性・腐食性・可燃性・反応性などの危険性を有する連邦政府管轄の廃棄物で、使用済み潤滑油、廃溶剤、鉛蓄電池、水銀・ニッケルカドミウム電池、蛍光灯、農薬およびその容器、PCBなどの産業系廃棄物に加え、血液、病原体培養物、手術由来組織、注射針などの感染性廃棄物も含まれる。
(注2)「一般廃棄物(Residuos Sólidos Urbanos)」は、主に家庭から発生する廃棄物および商業・サービス活動から排出される家庭ごみと類似した非危険性廃棄物を指し、市町村が収集・処理を担う。具体例として、生ごみ、紙・段ボール、プラスチック包装材、飲料容器などが含まれる。
(注3)「特別管理廃棄物(Residuos de manejo especial)」は、有害廃棄物や一般廃棄物に該当しないものの、排出量や性状の特性から州政府による特別な管理が必要とされる廃棄物を指す。具体例として、産業活動に伴う非危険性の副産物(金属くず、廃プラスチック、建設廃材)、大型機器廃棄物(家電など)、商業活動に伴う大量廃棄物などが含まれる。
(注4)COA(Cédula de Operación Anual)は、メキシコ環境一般法(LGEEPA)および同法に基づくRETCの規則に基づき、固定発生源を有する一定の産業施設に対して課される年次報告制度。主として、大気排出や有害物質の排出・移動を伴う事業所が対象とされる。
(注5)適用時に管理計画(Plan de Manejo)を未作成・未登録の事業所は、適用から120日間の猶予が与えられ、その間に管理計画を作成し、登録することができる(同規格の付則第3条)。
(注6)COAの報告対象でない流通業者などの場合、管理計画は「排出管理」ではなく回収・物流・責任分担の設計書になる。規格草案第6章に主に規定されており、(1)対象製品・対象廃棄物の特定、(2)回収スキーム(回収方法、回収主体、回収ルートなど)、(3)関係者(製造業者、輸入業者、販売業者、廃棄委託業者など)間の役割分担、(4)保管・輸送・最終処分の方法、(5)トレーサビリティと記録管理、(6)消費者への情報提供方法、(7)計画の実施・モニタリング・更新プロセス、などが盛り込まれる必要がある。
(中畑貴雄)
(メキシコ)
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