4月の郷里送金受取額は堅調も、中東情勢の影響懸念
(パキスタン)
カラチ発
2026年05月20日
パキスタン中央銀行(SBP)は5月11日、4月の海外送金(郷里送金)受取額が、前年同月比11.4%増の35億ドルになったと発表
した。前月比では7.6%減となったが、例年イスラム教の断食月(ラマダン)(2026年は2月中旬~3月中旬)に合わせて郷里送金が増加する傾向にあるため、4月はその反動で減少した。
2025年7月から2026年4月までの累計では339億ドルに達し、前年同期の312億ドルを8.5%上回るなど、依然として堅調な推移を示している。
国・地域別シェアで4割を超える湾岸諸国からの郷里送金
送金元では、サウジアラビアがトップの約8億4,200万ドル、次にアラブ首長国連邦(UAE)が約7億3,500万ドルと2カ国で4月送金全体の約45%を占め、湾岸地域への依存度が大きいことが確認される。その他、英国の約5億6,400万ドル、米国の約3億1,800万ドルと続いた。
郷里送金は、パキスタンの対外収支の安定に不可欠であり、輸出による歳入(注)を上回る外貨獲得源として外貨準備の下支えとなっている。IMFの支援プログラムでも、外貨準備高を輸入月額の約3.3カ月分、180億ドル程度を維持することが融資継続の条件とされており(2026年4月28日記事参照)、海外送金の堅調な推移は当該条件に資する要素だ。
一方、中東情勢の緊迫化により、出稼ぎ労働者の雇用環境の変化や郷里送金への影響が懸念される。UAEでのパキスタン人向けビザ発給をめぐっては、中東情勢の緊迫化以前から実質的な制限が生じていたが、昨今さらにビザ取得が困難になったとの声が上がっている。
不透明な中東情勢が長期化すれば、中長期的に郷里送金の伸びを抑制する可能性がある。湾岸諸国には約450万のパキスタン人が就労しており、既存労働者からの送金は足元で底堅く推移しているものの、今後は帰国者の増加、受け入れ国での新規渡航者の制限や就労ビザ更新遅延などが重なれば、送金基盤の縮小が懸念される。パキスタン政府にとっては、出稼ぎ労働者受け入れ国の政策動向や労働市場の変化を見極めつつ、外貨獲得源の多角化を進めることが政策課題となる。
(注)パキスタンの2026年3月の輸出による歳入は約25億6,000万ドル。
(糸長真知)
(パキスタン)
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