「BIOINNOVASIA 2026」、SAFの利活用促進に向けた議論を展開
(日本、ASEAN)
調査部米州課
2026年05月20日
東京都内で5月12~14日に、「BIOINNOVASIA 2026」が開催された。本カンファレンスは、アジア地域におけるバイオマスおよびバイオマスエネルギーの活用や技術革新を促進し、持続可能な社会への移行について議論する場として2024年から開催されている。アジア諸国を中心とした世界各国から約60人の企業関係者、政策立案者、研究者や学術関係者らがスピーカーとして集結し、活発な議論が行われた(注1)。
13日に開催された「バイオマス由来SAF:生産の拡大(SAF from Biomass: Scaling Production)」のパネルでは、SAF(持続可能な航空燃料)の利活用促進に向けた議論が行われた。シンガポールとシカゴに拠点を有し、SAFを含む次世代燃料を開発するAether Fuelsの創設者コナー・マディガン氏は、SAFの価格が高額であることやオフテーカー(引き取り手)である航空業界の収益構造の脆弱(ぜいじゃく)性が、SAFの利用促進を遅らせていると強調した。
SAFの利用については、国連機関や業界団体における温室効果ガス(GHG)排出削減目標の制定が、航空会社各社の利用を後押ししている。国際民間航空機関(ICAO)は2022年、パリ協定に基づき2050年までにカーボンニュートラルの実現を目指す目標に合意した(注2)。世界の航空会社で構成される業界団体である国際航空運送協会(IATA)も2021年、航空輸送分野における2050年のGHG総排出量をネットゼロとする目標を発表した。
こうした背景を踏まえ、マディガン氏は、現在生産されているSAFの大半はパーム油や食用油といった油脂を主要な原料として水素化処理する、いわゆるHEFA製法を経て製造されるものであり(注3)、パーム油はマレーシアやインドネシアで大量に生産されるためASEAN諸国でのSAF生産にメリットがあると述べた。そのうえで、油脂の流通量には限界があることから、農業残渣(ざんさ)や森林残渣などを原料とするセルロース系バイオマス由来SAFも将来的に拡大の可能性があると強調した。ただ、製造工程が多く煩雑なこと、原料の供給に制約があることから価格競争力が弱いことも指摘した(注4)。加えて、需要者である航空会社は、昨今のような先行き不透明な情勢が続く中ではリスクと隣り合わせの業界の1つであり、長期的な売買契約を締結することが難しいため、SAFの中長期的な需要を作り出すことができない難しさがあると強調した。
バイオマスや廃棄物由来資源を扱うオランダの貿易会社Komercon B.V.のレベッカ・グローエン氏は、SAFの需要を作り出すべく航空会社への補助金付与の必要性や原料サプライチェーンへの投資の重要性を指摘した。グローエン氏はまた、今後10年間でバイオマスを活用したSAF生産を加速させることによって、SAF製造の多様化が進み、本当の意味での持続可能な航空燃料となる、と述べた。
BIOINNOVASIA 2026の「バイオマス由来SAF:生産の拡大」のパネルの様子(ジェトロ撮影)
(注1)BIOINNOVASIAは、Centre for Management Technology(CMT)が運営するバイオマスに関連するカンファレンス。CMTは、シンガポールに拠点を有し、エネルギー、バイオマス、石油化学などの分野で世界各地でカンファレンスを開催している。BIOINNOVASIAは、2024年に初回が東京で開催された。今年は3回目の開催。
(注2)ICAOは、2050年までの目標として「国際航空における2050年ネットゼロGHG排出の長期志向目標(LTAG)」を採択した。その上で、SAFなどの導入に向けて、各国政府に対し、目標設定やロードマップの整備、品質・認証基準の策定、技術導入や運用支援、インセンティブ・投資の促進に関する政策立案や支援を促している。
(注3)詳細は、2025年12月11日地域・分析レポート「運輸脱炭素化にバイオ燃料の選択肢 次世代燃料導入の現状(1)」参照。
(注4)農業や林業残渣などを原料とするバイオマス由来のSAF製造にあたっては、原料をガス化し、合成ガスにした後に蒸留や分離によってSAFを製造するため、製造工程が多い。また、農業・林業残渣は通常、複数個所にあることか多く、SAF製造に必要な一定量を確保するための安定したサプライチェーンが必要になる。
(辻本希世)
(日本、ASEAN)
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