中東情勢の悪化でブラジルにおける養鶏産業のコスト上昇に懸念
(ブラジル、中東)
調査部米州課
2026年05月01日
中東情勢の悪化に伴い、ブラジルの養鶏産業におけるコスト上昇が懸念されている。ブラジル動物性タンパク質協会(ABPA)のリカルド・サンチン会長は、3月30日付現地経済誌「エザーメ」の中で、「中東地域での戦争により、卵と鶏肉の価格上昇は避けられない」と述べた。併せて、「値上げは直ちに行われない可能性はあるものの、企業や地域により時間差で進行し、最終的にはコスト転嫁が必要になる」と説明した。要因として、原油価格の高騰による物流コストの上昇に加え、主要な飼料であるトウモロコシの生産コストの上昇などを挙げた。
ブラジルは、肥料の約9割を輸入に依存し、そのうち3割強を、ホルムズ海峡を通過する中東諸国から調達する(2026年4月30日記事参照)。米国とイスラエルによる中東諸国の天然ガス施設などへの攻撃やホルムズ海峡の事実上の封鎖によって、天然ガスを原料とする肥料の供給が不安定化し、ブラジルにおける、特にトウモロコシを中心とした農産品の生産コスト上昇圧力が高まっている(4月21日付「アグロ・ラタン」)。
ブラジル国内で消費されるトウモロコシの約6割は飼料向けだ(注1)。近年、国内の家禽(かきん)、豚、牛の飼養拡大により、トウモロコシ消費量における飼料使途の割合が増加している(注2)。中でも、家禽向けが拡大している。飼料分析に定評があるオルテック社の年次レポート「Agri-Food Outlook 2026
」によれば、2025年のブラジルにおける家禽用の飼料生産量は前年比2.7%増加し、過去最高を記録した。鶏肉の国内消費が好調であることに加え、輸出需要も安定していることから、養鶏向け飼料の需要が堅調に推移し、トウモロコシ生産の拡大を下支えしている。ただ、中東情勢の悪化が長期化すれば、トウモロコシ生産量の減少や、生産に係るコスト上昇が見込まれ、養鶏産業にも影響を及ぼすとみられる。
日本にとってブラジルは、最大の鶏肉輸入相手国だ。ブラジルにとっても日本は鶏肉輸出相手の第2位(注3)。ABPAは4月8日、3月の鶏肉輸出量が前年同月比6%増加したと発表した。最大の輸出先である中東地域向けが前月比で18.5%減少したものの、日本や中国といった東アジア地域向けの輸出増加が押し上げ要因となった。
(注1)1月22日付のブラジル、トウモロコシ、ソルガム生産者協会(Abramilho)のレポート
(ポルトガル語)参照。2025年ブラジルのトウモロコシ生産量は世界第3位としている。
(注2)2025年8月1日付の米国農務省(USDA)のレポート
参照。「Agri-Food Outlook 2026」によれば、2025年のブラジルにおける飼料生産量は、中国、米国に次ぐ世界第3位。トウモロコシや大豆かすが飼料の主要原料。中国、米国、ブラジルの3カ国だけで、世界の飼料生産量の47.7%を占める。
(注3)2025年のブラジルにおける鶏肉生産量は、過去最高となる1,529万トン。同年の輸出量は前年比0.6%増加して過去最高を記録した。ABPAによれば、最大の輸出先はアラブ首長国連邦(UAE)(輸出量は前年比5.5%増)、輸出相手の第2位が日本(9.1%減)。次いで、サウジアラビア(7.1%増)、南アフリカ共和国(3.3%増)、フィリピン(12.5%増)、中国(55.5%減)と続く。地域別では、中東向けが全体の29.8%を占め最大。詳細は4月29日付ABPAの年次レポート(ポルトガル語)
参照。
(辻本希世)
(ブラジル、中東)
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