メキシコ政府、労働法改正を官報で公示、時間外含む労働時間の上限変更
(メキシコ)
メキシコ発
2026年05月12日
クラウディア・シェインバウム大統領は5月1日付の連邦官報で、労働時間を週48時間から週40時間に段階的に削減し、時間外労働時間を12時間に段階的に引き上げる(注1)ための連邦労働法の改正を公示した。労働時間に関する憲法改正は既に公示されていたが(2026年3月6日記事参照)、連邦労働法の改正案は、4月8日に上院で可決し、4月25日に下院で可決した。改正内容は、改正案とほとんど同じ(2025年12月9日記事添付資料参照)であるが、次の点が追加された。
- 第132条XXXIV項(一部抜粋):(勤怠の)電子記録の内容は、労働者と雇用主の間で合意したことが証明された場合、完全な証拠となる。
- 第994条IV Bis項:連邦労働法第132条XXXIV項の規定に違反した場合、(勤怠情報の電子的記録の)義務を負う雇用主に対し、250から5,000倍の法定価額算出係数(UMA、注2)の罰金を科す。
時間外労働の概念に注意
今回の改正では、第66条で時間外労働は週12時間を超えてはならず、1日当たり最大4時間、かつ、週に最大4日間と変更された(注3)。第68条の改正では、第66条に定める時間外労働(12時間)を超える時間外労働の延長は、週4時間を超えてはならないと規定された。つまり、全ての時間外労働の時間は週に最大16時間となる(注4)。現地の弁護士事務所に確認したところ、前提としてメキシコの労働法は慣習上、労働者権利保護の観点が強い制度だという。そのため、時間外労働自体が特別措置であり、残業の常態化を認めるものではないと言われている。こうしたことから、第66条の上限週12時間を超える時間外労働は、やむを得ない場合に認めるものであるべきとした。
労働・社会保障省(STPS)は、3月26日に「よくある質問
」と題したプレスリリースを公開した。以前の連邦労働法では、時間外労働時間の上限(週9時間)を超える労働について、明確に上限は設けられていなかったとし、今回の改正で、全ての時間外労働時間を含む週の上限は56時間(添付資料図参照)とする制度へ移行すると述べている。ジェトロがヒアリングした弁護士事務所の見解では、全ての時間外労働が合計週16時間(1日4時間×週4日)を超えてはならず、週16時間を超える時間外労働は原則違法となる可能性があるという。各企業は、時間外労働の取り扱いについて弁護士事務所などと相談し、適用開始となる2027年までに対応する必要がある。
また、123条XXXIV項で、各労働者の始業時間と終業時刻を含めて労働時間を電子的に記録する義務が課された。また、今回追加された第994条IV Bis項では、この義務に違反した場合、罰金の対象となることが規定された。今後、STPSが勤怠管理の電子化に関する一般規則を公布するため、その内容を確認する必要がある。
(注1)付則で、時間外労働の上限は2027年から段階的に1時間ずつ増加すると定められているため、即時に12時間とはならないことに注意が必要。詳細は(2025年12月9日記事添付資料参照)を参照。
(注2)法定価額算出係数(UMA)とは、罰金などの計算に用いる係数で、インフレ率などを加味して国立統計地理情報院(INEGI)が毎年1月に更新する。2026年は117.31ペソ/UMA(約1,068円、1ペソ=約9.1円)であるため、当該罰金額は推定2万9,327.5ペソから58万6,550ペソである。
(注3)第66条の改正では、労働者が時間外労働を行う際、雇用者は時間割賃金(1時間当たり)の2倍を手当として支払わなければならないとしている。
(注4)第68条で、第66条を超える時間外労働の延長は、週に4時間を超えてはならず、雇用者は時間割賃金(1時間当たり)の3倍を手当として支払わなければならないとした。
(阿部眞弘)
(メキシコ)
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