EU、ポルトガルの地下鉄入札で外国補助金規則適用により中国系企業からポーランド企業に変更
(EU、ポルトガル、中国)
マドリード発
2026年05月22日
欧州委員会は4月21日、ポルトガル・リスボン地下鉄の新規路線建設に関する公共入札について、中国国有鉄道車両大手、中国中車(CRRC)傘下のポルトガル法人から、ポーランドの鉄道車両メーカーPESAに車両サプライヤーを変更することを条件に、リスボン地下鉄公社が選定手続きを継続することを承認
した。欧州委は2025年11月から、同案件をEU外国補助金規則(FSR)
に基づき詳細調査を実施していた。
対象となったのは、ポルトガル建設大手モタ・エンジルが率いる企業連合による応札案。同連合は5億9,880万ユーロと最低応札額を提示していた。欧州委は、同連合に車両サプライヤーとして参加していたCRRCの子会社が、中国政府による直接補助金、優遇融資、税制優遇措置などを受け、市場の公正性を損なったと判断した。これを受け、企業連合側は車両サプライヤーを、市場の公正性を損なう外国補助金を受けていない欧州企業のPESAに変更する是正案を提案していた。最終的な契約授与の可否は、リスボン地下鉄公社が、変更後の応札内容が入札の技術・品質要件を満たすかを検討した上で判断する。
欧州委は2024年にも、ブルガリアの鉄道車両調達やルーマニアの太陽光発電案件で中国系企業を対象にFSR詳細調査を実施したが、いずれも応札者の撤退で終了していた。今回の決定は、FSRに基づく公共調達の詳細調査で、欧州委が初めて条件付きの最終決定を出した事例となる。また、公共調達手続きにおいて、下請け企業が受けた外国補助金を欧州委が審査した初の事例でもある。
FSRは、大規模なM&Aや公共調達手続きにおいて、EU域外の公的機関から補助金を受けた企業がEU市場で不公正な競争優位を得ることを防ぐ制度で、2023年7月に適用が開始された(2026年1月15日記事参照)。公共調達では、契約見込み額が2億5,000万ユーロ以上で、応札企業(親会社・子会社を含む)、主要下請け・サプライヤーが過去3年間に域外国から国別に400万ユーロ以上の外国金融拠出を受けている場合、欧州委への事前通知が求められる。
さらに、EUが支援する域外インフラ案件でも、同様の論点が浮上している。EU専門誌「ユーラクティブ」(5月13日)は、セネガルの都市交通整備事業の案件でCRRCによる応札が価格面で欧州メーカーよりも優位に立つ可能性があることを受け、欧州委のヨゼフ・スィーケラ国際協力担当委員が、今後のEU開発援助政策に「欧州優先」を組み込む方針を示した、と報じた。
EUは、域内公共調達ではFSRを活用し、不公正な競争優位を得ることを防ぐ。一方で、域外ではEU資金を使うインフラ案件の調達方針の見直しが議論されている。中国企業の価格競争力と外国補助金を巡る問題は、欧州の経済安全保障上の課題でもある。
(小野恵美、伊藤裕規子)
(EU、ポルトガル、中国)
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