4月の米雇用統計、新規雇用者数は2カ月連続で高い伸びも、労働市場は強弱が混在
(米国)
ニューヨーク発
2026年05月11日
米国労働省は5月8日、4月の雇用統計を発表
した。2カ月連続で10万人超の伸びとなった非農業部門の新規雇用者数が労働市場の回復の兆しを示唆する一方、労働参加率や賃金などは依然として弱さを示しており、雇用環境は強弱が混在している。
家計調査(注1)の結果をみると、就業者数(前月差22万6,000人減)、失業者数(同13万4,000人増)、労働参加率(61.8%、前月から0.05ポイント低下、注2)を踏まえた失業率は4.3%と、前月からわずかに上昇した(添付資料表1、図1参照、注3)。労働参加率が引き続き低下し押し下げ要因となったが、失業者数の増加などが押し上げに寄与した。広義の失業率(注4)は8.2%(前月8.0%)と再び上昇している。総じてみれば、4月の家計調査の結果は引き続き労働市場の弱さを感じさせる内容の方が多い。
事業所調査の結果はまちまちだ。非農業部門の新規雇用者数は11万5,000人増と市場予想(6万5,000人増)を上回り、2カ月連続で10万人を超える高い水準となった(注5)。また、3カ月移動平均の数値は4万8,000人増と、ダラス連銀が試算する
ブレーク・イーブン(注6)である約3万人を引き続き上回る良好な数値となっている。
内訳では、政府部門が8,000人減、民間部門が12万3,000人増だった。業種別では、教育・医療(4万6,000人増)、運輸・倉庫業(3万人増)、小売業(2万2,000人増)、娯楽・接客業(1万4,000人増)などが主な増加要因となっている(添付資料表2、図2参照)。もっとも、小売業および運輸・倉庫業の伸びは特定の部門に偏っており、この伸びが継続的なものなのかどうかは慎重に見る必要がある。
賃金に関しては、良好とは言い難い。平均時給は37.41ドル(前月37.35ドル)で前月比0.2%増(前月0.2%増)、前年同月比3.6%増(前月3.4%増)と伸びは低い水準で、市場予想(前月比0.3%増、前年同月比3.8%増)を下回る結果となった。求職者1人当たりの求人数は1を下回る状態が続いており、これが賃金上昇率の低下の一因となっているようだ。いくつかの先行指標でもこうした状況は大きく変化しておらず、短期的な改善は期待しにくい。
労働省が発表している労働生産性および単位労働コストの統計
では、2026年第1四半期の労働分配率が54.1%と1947年の統計開始以降で最低となった。これは、企業が雇用増や賃金上昇ではなく、人工知能(AI)・自動化などそれ以外の分野に資金を回すことを強く選好していることを意味しており、AI・データセンター投資の驚異的な増加(2026年5月7日記事参照)と労働市場の回復は現在のところトレード・オフになっているように見える。これがバランスを取り戻すまでにはしばらく時間がかかる可能性が高く、労働市場を見る上では、単月の数字よりも、こうした構造的な状況により目を向ける必要がありそうだ。
(注1)雇用統計は失業率などを含む家計調査と、非農業部門新規雇用者数や平均賃金などを含む事業所調査の2種類の統計から成り立っている。
(注2)公式統計を基にジェトロが計算した小数点第2位までの数値で比較すると、4月は61.83%と前月(61.88%)から0.05ポイント低下。
(注3)公式統計を基にジェトロが計算した小数点第2位までの数値で比較すると、4月は4.34%と前月(4.26%)から0.08ポイント上昇。
(注4)失業者に加え、「現在は仕事を探していないが、過去12カ月の間に求職活動を行った者」と「フルタイムを希望しているものの、非自発的にパートタイムを選択している者」を合わせて算定した数値。
(注5)2月の数値は13万3,000人減から15万6,000人減に下方修正される一方、3月の数値は17万8,000人増から18万5,000人増に上方修正されている。
(注6)失業率が上昇しないために必要と考えられる新規雇用者数を指す。バイデン前政権下の緩和的な移民政策のもとで外国人労働力が大きく増加した2023年のブレーク・イーブン雇用者数は約16万人だったが、第2次トランプ政権下では外国人労働力を中心に労働供給が大幅に減少した結果、数値は大きく低下している。
(加藤翔一)
(米国)
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