重要原材料の供給不安が深刻化、循環型経済の強化で依存脱却を提示、独立系シンクタンク
(オーストリア、EU、中国)
ウィーン発
2026年05月22日
オーストリアの独立系シンクタンクのコンテクストとオーストリア・サプライチェーン・インテリジェンス研究所(ASCII)が5月12日に発表したレポートによると、EUにおける重要原材料(CRM)の供給不安が深刻化している。欧州委員会が重要原材料法(CRMA)で定めた戦略的重要原材料17品目(2026年1月28日付地域・分析レポート参照)のうち12品目について、EU域内における供給が「極めて危機的」あるいは「危機的」な状態にあると評価した(注)。
またオーストリアについては、原材料のほぼ半数において中国への依存度が最も高いと指摘した。特に脆弱(ぜいじゃく)とされているのは、リチウム(バッテリー用)、レアアース(モーターや風力タービン、電子機器に用いる永久磁石用)とマグネシウム(自動車、包装、建設用)だ。17品目のうち8品目で中国への依存度が高く、供給構造の偏りが浮き彫りとなっている。こうした状況は、自動車、鉄鋼、機械製造といったオーストリアの主力輸出産業に大きな影響を及ぼす。これら3つの産業の総輸出額は約240億ユーロに上るが、そのサプライチェーンが深刻な危機にさらされていると評価している。
こうした課題に対し、コンテクストとASCIIは依存脱却の道として次の「5つの対応策」を提示した。
- 資源消費と経済成長の切り離し(デカップリング)による原材料需要の削減。
- 材料効率の向上、循環材料による代替の推進。
- 修理促進やモジュール化による製品寿命の延長。
- 製品および部品の再利用〔例:電気自動車(EV)用バッテリーのセカンドユースなど〕。
- 建設廃材や永久磁石などのリサイクル拡大。
コンテクストのカタリナ・ロゲンホーファー理事は、「デア・スタンダード」紙(5月13日)に対し「欧州とオーストリアにとって、重要原材料の安定供給を確保することは、循環型経済のあらゆる手段を活用して初めて実現可能だ。需要削減、材料効率や耐久性の向上、再利用やリサイクルなど、あらゆる手段を活用する必要がある」と述べた。また、ASCIIのディレクターであるペーター・クリメック氏は「データは、サプライチェーンの脆弱性は抽象的な脅威ではなく、直接的な経済的影響を伴う構造的な課題であることを明確に示している」と指摘し、循環型経済の推進が持続可能性の向上と供給の安定性という二重の効果をもたらす可能性があるとの認識を示した。
(注)極めて危機的な8品目:ホウ酸塩、ガリウム、ゲルマニウム、リチウム、ニッケル、マグネシウム、ロジウム、レアアース。危機的な4品目:アルミニウム、ビスマス、金属シリコン、タングステン。なお、残りの5品目であるコバルト、銅、マンガン、グラファイト、チタンについては、差し迫った供給リスクは認められないが、リスクにさらされていると評価している。
(エッカート・デアシュミット)
(オーストリア、EU、中国)
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