アストラゼネカが3億ポンドの英国内投資を決定、英米医薬品協定が後押し
(英国、米国)
ロンドン発
2026年05月11日
現地報道によると、英国製薬大手のアストラゼネカは4月29日、英国で総額3億ポンド(約636億円、1ポンド=約212円)を投資すると、同社最高経営責任者(CEO)のパスカル・ソリオ氏が四半期決算発表の場で発表した。2025年9月から中断していたケンブリッジの研究拠点の拡張投資(投資額:2億ポンド)の再開に加え、新たに1億ポンドを投じイングランド北西部マクルズフィールドにおける研究開発を進める。後者では、デジタル技術やデータ活用により医薬品開発を進める「未来の研究所」も建設するとしている(2026年4月29日付タイムズ)。
同社は2025年9月、英国での投資計画を一時中断していた。同時期に米国製薬大手のメルクも英国政府の医薬品産業への投資不足を理由に、英国での10億ポンド規模の拡張計画を撤回するなど、業界内で投資見直しの動きが目立った。2025年9月12日付BBCは、英国の医薬品支出が英国の医療支出全体の約9%にとどまり、他の先進国と比べて低水準である点を背景として指摘している。
英国政府は2026年4月2日、英米医薬品協定の最終合意内容を発表
した。同協定の後押しで、英国は革新的医薬品への支出を今後10年間で倍増するとともに、英国産医薬品は少なくとも3年間、米国が通商拡大法232条に基づいて賦課する追加関税の免除対象となる(2025年12月9日記事参照)。また、英国国立保健医療研究所(NICE)の費用対効果評価基準の見直しにより、これまで費用面で承認に至らなかった治療の承認拡大が見込まれている。
キア・スターマー首相は4月29日、議会で「アストラゼネカの投資決定は、英米医薬品協定の合意によって可能となった」と述べた。
4月20日には、ドイツ製薬大手のベーリンガーインゲルハイムがロンドンの人工知能(AI)アクセラレータ拠点に今後10年間で1億5,000万ポンドを投資する計画を公表
した。英国製薬工業協会(ABPI)は4月29日、2025年12月の英米医薬品協定合意以降、英国全土で13件の新規投資案件が公表され、投資総額は14億ポンドに達したと発表
。同協会CEOのリチャード・トーベット氏は「ライフサイエンス投資のグローバル拠点としての英国の地位の回復を示す強力なシグナルだ」との見方を示した。
(森詩織、植松麗良)
(英国、米国)
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