中東情勢悪化で、アラブ地域の水と食料の供給に影響、国連機関が報告
(中東、湾岸協力会議(GCC))
調査部中東アフリカ課
2026年04月08日
国連西アジア経済社会委員会(ESCWA)は4月2日
、中東地域情勢の急激な悪化の影響で、世界の食料価格が20%上昇した場合、アラブ諸国の低・中所得国で新たに500万人が食料不安に陥るとの報告を発表した。
ESCWAは、水や食料を含む基礎的な供給体制への影響も深刻化していると指摘した。特に水の安全保障については、湾岸協力会議(GCC)諸国で約4,000万人が湾岸の海水淡水化に依存しており、エネルギー施設や淡水化インフラへの被害、紛争に伴う海洋汚染に対して極めて脆弱(ぜいじゃく)な状況にあると警告した。家庭レベルでの緊急用水の備蓄が限られる中、混乱が長期化すれば、人道危機へ急速に発展する恐れがあるとしている。
さらにESCWAによると、食料システムもすでに大きな圧迫を受けている。アラブ地域は穀物の大半を輸入に依存している一方、備蓄は消費量の3カ月分強にとどまるという。燃料価格の上昇や海上輸送ルートの混乱、肥料価格の高騰により、今後は食料価格や生産コストのさらなる上昇が見込まれ、低所得世帯や脆弱層への影響が一段と拡大する可能性があるという。ESCWAは早期警戒システムの導入、戦略備蓄の地域的確保、貿易ルートの多様化に加え、エネルギー・水・食料分野における強靱(きょうじん)なシステムへの投資を加速する必要があると訴えた。
なお、ESCEAは3月19日に、情勢悪化によるアラブ地域の1カ月当たりの損失額が1,500億ドルに上るとの推計を公表している(2026年3月31日記事参照)。
また、国連貿易開発会議(UNCTAD)は4月1日、「ホルムズ海峡混乱:成長と金融面への影響」と題する報告書
を発表した。UNCTADによると、世界の石油・ガス供給の要衝であるホルムズ海峡では船舶航行が事実上停止しており、3月1日から29日の間に同海峡を通過した1日当たりの船舶数の平均は、2月1日から27日の平均に比べて95%減少したという。原油やガス価格の高騰は生活費を押し上げ、途上国では、株価の下落、通貨安、対外債務コストの上昇といった経済的影響が生じると指摘している。UNCTADは物価抑制と金融支援を柱とした、途上国向けの緊急対応を強化する必要があるとしている。
中東情勢は特集「イスラエル・米国とイランの衝突に関する中東情勢」も参照。
(加藤皓人)
(中東、湾岸協力会議(GCC))
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