インド、政府保証付き「BMIプール」創設、海上保険の国内完結を目指す
(インド)
ムンバイ発
2026年04月24日
インド政府は4月18日、政府保証付きの新たな海上保険制度「BMIプール(Bharat Maritime Insurance Pool)」の創設を正式に閣議決定した(添付資料参照)。政府による補償額は約14億ドルに上り、船体・機関、貨物、P&I(第三者賠償責任)、戦争リスクなど、主要な海上リスクを包括的にカバーする。対象はインド船籍船、実質的にインドが管理する船舶ならびにインド発着の貨物を積載する外国船にも及ぶ。
創設の背景には、近年の中東を中心とした地政学リスクの高まりがある。ホルムズ海峡をめぐる緊張などを受け、国際P&Iクラブ(注1)や再保険(注2)会社が戦争リスクの補償を制限・停止する事例(2026年3月18日記事参照)が相次ぎ、インド関連船舶に対する保険の確保が困難となっていた。特に、P&I保険についてはロンドンを拠点とする国際P&Iクラブへの依存度が極めて高く、補償範囲が喪失した際の影響の深刻さが課題とされてきた。
BMIプールは、国内損害保険会社が共同で約1億ドルの保険引き受け能力(注3)を拠出し、不足分を政府が補償する仕組みとなっている。これにより、海外再保険市場の動向に左右されず、インド国内で完結できる保険体制の構築の実現が見込める。政府は本制度を通じ、保険料の高騰抑制と継続的な補償の提供を図るとともに、海上保険の引き受け、保険金請求管理、法務対応といった専門機能を国内で育成する方針だ。
インドは原油や資源調達の多くを海上輸送に依存しており、海上保険の安定確保は経済安全保障上の喫緊の課題だ。BMIプールは短期的な危機対応にとどまらず、インド国内の海運・保険分野の自立性強化を目指す制度として、今後の効率的な運用と民間企業への波及効果が期待される。
(注1)世界の主要な12のP&Iクラブが国際P&Iグループを形成し、世界の外航船船腹量の約9割の保険を引き受けている。この12のクラブは、それぞれ独立した相互保険組合となっている。
(注2)保険会社が引き受けた保険契約上のリスク(損害賠償責任の一部または全部)を、別の保険会社(再保険会社)に分散・転嫁する保険。地震や大火災、巨大タンカー事故など、保険会社1社では負担しきれない巨額の補償に備え、リスクを共同で負担する仕組み。
(注3)保険会社が経営の安定確保を前提に、どの程度の保険責任(保険金支払い義務)を負えるかという能力を指す。
(野本直希)
(インド)
ビジネス短信 ef0ee756fa9f4631





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